研究領域 | シンクロ型LPSO構造の材料科学 ―次世代軽量構造材料への革新的展開― |
研究課題/領域番号 |
23109003
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研究機関 | 独立行政法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
相澤 一也 独立行政法人日本原子力研究開発機構, J-PARCセンター, 研究主幹 (40354766)
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研究分担者 |
木村 滋 公益財団法人高輝度光科学研究センター, 利用研究促進部門, 副主席研究員 (50360821)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | LPSO / マグネシウム / 中性子 / 放射光 / 結晶構造 / 応力応答 |
研究実績の概要 |
今年度は、J-PARCにおいては、Mg85Zn6Y9一方向凝固材、Mg85Zn6Y9鋳造材、Mg89Zn4Y7押出材、Mg97Zn1Y2鋳造材、Mg97Zn1Y2押出材に関して、匠を用いた中性子回折による結晶構造解析、引張/圧縮応力下その場中性子回折による応力応答特性の評価を実施した。18R LPSO相の結晶構造については、その基本構造は、電子顕微鏡観察により提案されている結晶構造モデルと良い一致を示すことを明らかにした。18R LPSO単相の応力応答挙動としては、a軸方向とc軸方向に弾性異方性があることが明らかになった。更にLPSO相体積分率が低濃度の2相合金Mg97Y1Zn2押出バルク材においては、弾性範囲内では、異方性の無い振る舞いを示し、塑性変形領域では、18R LPSO相が強化を担うこと及び結晶子が回転することを明らかにした。またSuperHRPDを用いた精密結晶構造解析に着手すると共に大観を用いた中性子小角によるナノ構造解析に着手した。 SPring-8においては、Mg85Zn6Y9 LPSO単相試料及びMg29Al3Gd4結晶を用いて、BL40XUピンポイント構造計測装置を用いて単結晶回折測定を実施し、それぞれの試料でLPSO単相と思われる回折データの収集に成功した。得られた回折データはブラッグスポットとストリークが混在したものになっており、現在、このデータを満たす構造を解析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本計画研究の目的は、世界トップクラスの大型量子線施設J-PARC(中性子)、SPring-8(放射光)の最新鋭装置群(SuperHRPD、匠、大観、BL02B2、BL13XU)を駆使して世界最高精度でLPSO相の結晶・組織解析を行い、結晶構造解析では、原子配列(J-PARC)、電子密度分布(SPring-8)を精密決定し、両者の比較により構造に関与する電子密度分布を抽出してシンクロ型LPSO構造の材料特性を明らかにすること、組織(高次構造)解析では、温度、応力を外場としてシンクロ型LPSO物質の凝固・析出・変態相、応力応答、転位・キンクバンド構造の時分割その場組織観察を行い、シンクロ型LPSO構造形成過程及びキンクバンド形成・変形過程を明らかにすることである。これらの成果により、シンクロ型LPSO構造の材料特性発現に関する学理構築に貢献することを目標としている。 今年度までに、LPSO相の結晶・組織解析、応力応答に関する基本的なデータの取得・解析が予定どおり進捗しており、今後、LPSO相の精密な結晶構造、形成過程、強化機構に関する知見を得ることが可能と考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、J-PARCにおいては、SuperHRPDによる精密構造解析を進める。他班と連携して、本年度導入した高温変形ステージ等を使用して圧縮応力下中性子その場回折実験を継続し、バルク材を用いたキンク変形挙動の観察を進めると共にMg-Y溶融試料高温中性子回折実験、タイプIIのLPSO相形成合金の高温中性子回折実験を実施し、形成過程の観察を進める。変形組織・形成過程観察は、大観を用いた中性子小角散乱測定も併用して実施する。 Spring-8においては、Mg85Zn6Y9合金、Mg29Al3Gd4合金の単結晶構造解析を進めるとともに、本年度試作した微小試料応力印加試験装置を元に微小領域での応力印加実験に着手する。
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