研究概要 |
発足初年度にあたる本年度は,最終目標であるLPSO構造型物質の構造特性設計における指導原理の獲得に向けて,主として手法の構築・検証,計算機コードや計算機環境の整備を実施し,比較的簡単なモデルでそれらの有効性を検証した.具体的な成果は以下の通りである. (1)第一原理計算により,積層の異なるMg母相(hcp/fcc)中の各種添加元素間および添加元素・空孔間の相互作用を予測評価し,エネルギー的に安定となるこれらの点欠陥間の近接関係を明確にした.また,添加元素置換による局所ひずみの影響を評価した. (2)添加元素の偏析・秩序化プロセスにおいて重要となる原子・空孔拡散の素過程を系統的かつ網羅的に解析するための準備として,第一原理計算を活用しながら低い計算負荷で反応経路および活性化障壁を探索する手法を検討し,既存の第一原理計算コードに実装した.また,基礎的な結晶系について動作検証を行った. (3)LPSO構造およびそれを構成する元素・化合物について有限温度における構造の安定性ならびに力学特性の温度依存性を評価するための準備として,格子振動モデルに基づく自由エネルギー評価手法を検討した.また,当該解析を実現するための計算機コードの整備を進めた. (4)第一原理計算によりMgの非線形領域に渡る弾性特性を定量的に予測評価した.また,このアプローチを一般化し,任意の対称性を持つ結晶について高次弾性定数を評価することを可能にした.更に,この関係を構成式として表現する枠組みを構築した. (5)LPSO構造の原子配列に関する知見獲得のための基礎的解析として,実験班から供与された結晶学的知見に基づき,Mg-Zn-Y系およびMg-Al-Gd系のLPSO構造モデル(14H-type)に対する第一原理計算を試行した.同時に,本物質系において適切な解析条件・近似手法について検討した.
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今後の研究の推進方策 |
次年度は,初年度に構築した研究基盤に立脚し,以下に挙げる課題に取り組む.(1)Mgに対する各種積層変調モデル(11,12,E等の組合せ)の構築とその積層欠陥エネルギー,ならびに添加元素の溶解・偏析エネルギーの評価,(2)Mg中添加元素の原子・空孔拡散の素過程解明,ならびに遷移状態理論に基づく原子拡散モデリング手法の構築,(3)LPSO構造およびそれを構成する元素・化合物について,構造特性・力学特性の温度依存性を評価するため自由エネルギー評価手法の構築,(4)非化学量論領域を含めた安定原子配列構造の可能性探索のため,実験班より供与されたLPSO構造モデル(14H,18R)をベースとした元素置換モデル(disorderモデル)に対する系統的解析の実施,ならびに結晶学的情報(対称性,格子位置,規則性等)の獲得
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