研究領域 | シンクロ型LPSO構造の材料科学 ―次世代軽量構造材料への革新的展開― |
研究課題/領域番号 |
23109004
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
君塚 肇 大阪大学, 基礎工学研究科, 准教授 (60467511)
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研究分担者 |
山口 正剛 独立行政法人日本原子力研究開発機構, その他部局等, 研究員 (50360417)
松中 大介 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (60403151)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | LPSO構造 / 軽量構造材料 / 積層欠陥 / 添加元素 / 第一原理電子状態計算 |
研究実績の概要 |
本年度は,LPSO構造の特異な構造特性発現を引き起こす主因子を原子・電子レベルから特定すること,ならびにLPSO構造における変形基礎特性を明らかにすることを目標に,主にMg-M-RE系(M = Zn, Al, Ni; RE = Y, Gd)を対象にして,昨年度に引き続き基軸となる手法の構築・検証および解析の実行を進めた.また,実験班から供与されたMg基LPSO構造の基礎的モデルを適宜活用してそれらの有効性を確認した.具体的には,以下の4項目について研究を遂行した.
(1) 2次元コロイド剛体球系とのアナロジーを用いた粗視化アプローチに基づいて,Mg基LPSO構造における種々の溶質原子クラスターの面内規則性とエネルギー安定性の関係を,第一原理計算に基づく相互作用データを活用しながら定量的に評価した. (2) LPSO構造のキンク変形時における転位の活動機構について検討するため,10H型Mg-Ni-Y系LPSO構造を対象として一軸圧縮力下における底面すべりの一般化積層欠陥エネルギーを第一原理から計算し,転位移動のエネルギー障壁およびパイエルス応力を解析した. (3) LPSO構造において濃化層が周期的に配列する物理的起源を明らかにするため,簡易な1次元ばねモデルを用いて質量変化が周期的に配列した場合のフォノン状態密度および自由エネルギーの変化を評価し,濃化層の周期秩序におけるフォノンの効果を検討した. (4) 添加元素によるMgの非底面すべり系の活性化に関する機構を検討するため,主に錐面<c+a>らせん転位および双晶界面から交差すべりしたzonal dislocationの芯構造を第一原理計算により直接的に評価した.また,Mg合金の異方的な塑性変形挙動を転位レベルから理解するため,分子動力学法によりMgの圧縮過程における転位と双晶境界の反応の様態を調べた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,公募研究者をメンバーとして迎え,第一原理計算に基づく電子論・原子論的解析を遂行する上で有効となる既存情報を提供する一方,局所的エネルギー・応力状態および熱力学的安定性の観点からの知見提供を受けるなど,班内連携を意識しながらMg基LPSO構造における秩序構造・変形特性の発現機構の解明を進めた.特に,研究が密接に関連するA01班内ならびにA02班,A03班の関連研究者間で研究会を適宜実施し,実験的知見に基づく構造モデルの情報提供を受けるとともに,計算科学の立場から検証が必要なモデルケースおよび物性値に関して議論・検討した.このことにより実験研究および計算研究を融合した連携を効果的に進めることができ,当初掲げた項目について順調に着手することが出来たと考える.この他班との連携研究(実験・計算)の成果の一部に関しては,本年度学術雑誌論文として掲載されるに至っている.また,国内外の関連学協会において積極的に発表・議論することに加えて,異分野学会主催の研究会・スクール等の機会を活用して情報発信を行うなど,研究成果の広報活動を展開した.
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今後の研究の推進方策 |
次年度は,これまでに構築した研究基盤に立脚し,以下に挙げる課題に引き続き取り組む.これらは,LPSO構造型物質の積層変調・濃度変調の存在機構を理解するための重要な因子であり,他班において当該物質の形成機構,強化機構等の解明を更に進める上での基盤的知見となる.
(1) 種々の溶質元素・クラスターを対象とするMg基LPSO構造における各種相互作用(電子状態由来,フォノン由来)の評価,ならびに面内秩序化,周期秩序化に関するエネルギー論的解析 (2) LPSO構造および関連する元素・化合物系に関する変形基礎特性の評価(各種すべり系に関する転位移動過程の解析,溶質濃化層に関する弾性特性,局所ひずみの評価等を含む)
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