研究領域 | シンクロ型LPSO構造の材料科学 ―次世代軽量構造材料への革新的展開― |
研究課題/領域番号 |
23109005
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
奥田 浩司 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50214060)
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研究分担者 |
飯久保 智 九州工業大学, 生命体工学研究科(研究院), 准教授 (40414594)
三浦 誠司 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授(Professor) (50199949)
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研究期間 (年度) |
2011-07-25 – 2016-03-31
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キーワード | 計算状態図 / 実験状態図 / 結合エネルギー / シンクロLPSO / 相安定性 |
研究概要 |
本年度は、放射光でのその場測定では液相が関与する温度域までのその場測定による評価が成功した。まず共通試料として供給されており、LPSOの体積率がほぼ1であるMg85Y9Zn6組成のバルク鋳造材を使い、10K/minの速度で等速昇温、降温をおこなった。 本手法を種々の条件に拡張していくことによってIn-situの状態図検証実験をおこなうことは状態図決定の有効なアプローチになると期待される。この観点から、本年度追加予算で放射光その場測定を目的とした専用の試料作成/溶解とX線検出器のカメラ部を購入し、現在システムを構築中である。また、本年度の結果としては拡張前のシステムにおいてMg85Y9Zn6の共通試料多結晶材をその場加熱-SWAXS測定することにより、LPSO構造のc軸方向の濃度変調の崩壊と濃化層のクラスターの面内規則構造の崩壊、融解に伴う基本反射のハロー化が同じ温度で起こることが明らかとなった。 これは回折パターンを実時間で追うことにより、融解とLPSO形成/消滅の関係を明らかにしたものであり、熱分析による状態図の報告例と比較してLPSOの融解が比較的低温度で起こっていることを示している。このような時間変化を与えるLPSOは逆に見れば平衡構造に到達するのに非常な長時間を要する可能性がある。したがってLPSOが関与する状態図を明らかにするためにはIn-situ測定と並行して長時間熱処理によって系が到達する相の共存関係を調べる事が重要である。 本研究グループの実験状態図の成果よりLPSOおよび周辺相の安定状態や共存関係が明らかになりつつある。 また、計算状態図により、実験的な解明がまだ困難であるMg-Gd-X系のLPSOに対して組織形成の観点から、状態図上の特性温度の算出を行い、比較した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
状態図的な観点での計算状態図および第一原理相安定性の検討はほぼ計画通り進んでいる。また、実験状態図によるLPSOの相境界ならびに共存相の関係は組織の安定性や熱処理をおこなう固相変態領域においてはこれまで不明であった安定な共存関係を明らかにしつつある。 一方、より高温について計画しているIn-situ法については中性子源のトラブルからやや遅れ気味であるが、現在回復途上にある。 液相からのTypeILPSO形成過程については液相領域を含むその場測定法が計画より1年早く進み、第一報がすでに論文化されている状況である。
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今後の研究の推進方策 |
全体的にほぼ計画通りであり、申請時に提出した計画については大きな問題点などは現時点では発生していない。 そのため、現段階では中間評価時に提出した計画内容を着実に進めることを基本とする予定である。それに加えて新たに予定より進展が見られている放射光In-situ測定法について、LPSOの組織変化と安定性に関する評価を散乱ベクトル領域を広げながらほかの合金系へと拡張してゆくとともに、相変化の追跡という観点から中性子との相補的な高角データ同時取得の手法を試行し、実験状態図的な観点からの高温での共存関係の解明にも着手する。
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