研究概要 |
本研究では,各種構造相転移を想定しLPSO構造生成への格子歪の影響について実験,理論的に検討することを目的とし,(1)格子定数変化に伴うLPSO構造の変化およびLPSO構造形成に伴うせん断歪発生と歪緩和過程のマイクロメカニクス解析を用いた検討,(2)HRTEM観察によるLPSO構造および界面での局所格子歪の評価,(3)濃度変調から生じる弾性歪エネルギーの電子論に基づく評価およびせん断型構造相転移を取り扱うフェーズフィールド法によるLPSO構造形成過程の理論的検証,を行っている. 平成23年度は,LPSO構造に重要な積層欠陥状の析出物の生成に伴う歪エネルギーおよび拡散緩和の可能性に関しての検討をマイクロメカニクス解析により行った結果,積層変化に伴う歪の拡散緩和が十分起こりえない可能性が示唆された(古原).また,Mg_<97>Y_2Zn_1合金の時効処理材の電子顕微鏡解析を行った結果,時効により18Rから14Hへの構造転移が進行し,長時間時効では構造転移が完了することを明らかにした(木口).Mg-Y-Zn合金におけるLPSO構造形成の素過程として,(1)周期的な積層欠陥の導入,(2)Y,Znの規則的配列の2つを考え,積層欠陥先行型と溶質原子規則化先行型のそれぞれのシナリオについて,第一原理計算キネティックモンテカルロシミュレーターを開発した(西谷).また,Mg-Y-Zn合金における準安定hcp相の相分離過程についてフェーズフィールド法を用いた理論解析を行った結果,相分離初期では,純Mgコーナーで濃度差が小さくタイラインとは全く異なる方向に準安定スピノーダル分解が起こることを見出し,この分解がLPSO構造生成に深く関わる可能性を示した.
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今後の研究の推進方策 |
積層欠陥やγ"相の弾性相互作用の影響とLPSO構造との関係を明らかにするための理論検討を行うと共に,外部応力によるLPSO構造の変化に関して実験を開始する.また,時効初期段階を中心にLPSO構造の高分解能観察による局所弾性場解析を進め,格子歪の発生挙動について詳細に検討する予定である。第一原理計算キネティックモンテカルロシミュレーションについては,系のサイズを拡大すると共に,今年度仮定した素過程以外に重要な機構を考慮する方向で検証を進める.フェーズフィールドシミュレーションでは,相分離の他に結晶変態や積層欠陥の形成などを同時に定量化できるモデルを開発する方向で研究を進めていく.
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