研究領域 | シンクロ型LPSO構造の材料科学 ―次世代軽量構造材料への革新的展開― |
研究課題/領域番号 |
23109006
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
古原 忠 東北大学, 金属材料研究所, 教授 (50221560)
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研究分担者 |
木口 賢紀 東北大学, 金属材料研究所, 准教授 (70311660)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 金属物性 / 格子欠陥 / 構造・機能材料 / 自己組織化 / 表面・界面物性 |
研究実績の概要 |
LPSO構造の形成初期に重要な役割を果たす核生成サイトについての検討を行うため,Mg-Zn-Y合金において過飽和なMg母相中に温間弱加工で転位を導入した後,時効によりLPSO構造を生成させ組織の特徴を調べた結果,Mg母相転位はLPSO構造の優先核生成サイトであることが明らかとなった.しかしながら,前加工の有無に関わらずLPSO構造は14Hであり,構造の発達にはせん断歪みの自己緩和が有効に働いていることが明らかとなった.さらに,3DAP解析により,LPSO構造の生成の進行にともなうfcc構造ユニットおよび周囲の母相の溶質元素濃度分布を定量的に解明した.Mg-Zn-Gd合金においてHAADF-STEM法により析出速度の遅い比較的低温における時効初期段階での濃化層形成挙動を検討した結果,時効による濃化の進行は積層欠陥を伴わずにスピノーダル的に起きていることを示唆する結果が得られた. 第一原理計算においては,溶質原子が構成するL12型クラスターと溶質原子との相互作用を検討し,Zn-Yクラスターが凝集した積層欠陥からは溶質元素が単独で移動する場合とペアで移動する場合とで,クラスター領域からの溶質原子の掃き出し挙動が変化することが示唆された.蛍光X線ホログラフィーを用いてMg-Zn-Y合金のZn/Y濃縮層の構造評価を,蛍光X線ホログラフィーを用いて行った結果,安定しているYの籠の中にZnの原子が大きな揺らぎをもって配置しているという描像が得られた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度までの成果から,過飽和な母相からの析出によるLPSO構造形成にはせん断歪みの有効な緩和が大きな役割を果たしていることが明らかになっている.初期過程における積層欠陥中の元素濃縮を定量的に評価をさらに進めることで,構造形成メカニズムの解明が可能である.
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今後の研究の推進方策 |
今後はさらにLPSO構造形成の前駆段階である拡張転位(積層欠陥)への溶質元素の濃化挙動についてHAADF-STEMや3DAPを用いて検討を行う. また,第一原理計算においては構造緩和によるエネルギー変化についてさらに計算を行う予定である.さらに,蛍光X線ホログラフィーを用いた精密な原子配置の評価を行う.
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