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2012 年度 実績報告書

コンドロイチン硫酸を中心とした糖鎖による神経活動の制御機構

計画研究

研究領域統合的神経機能の制御を標的とした糖鎖の作動原理解明
研究課題/領域番号 23110003
研究機関神戸薬科大学

研究代表者

北川 裕之  神戸薬科大学, 薬学部, 教授 (40221915)

研究分担者 田村 純一  鳥取大学, 学内共同利用施設等, 教授 (30221401)
研究期間 (年度) 2011-04-01 – 2016-03-31
キーワードプロテオグリカン / コンドロイチン硫酸 / 硫酸基転移酵素 / 神経可塑性 / 抑制性神経細胞 / 視覚野 / グリコサミノグリカン / 眼優位性可塑性
研究実績の概要

コンドロイチン硫酸(CS)は、グルクロン酸とN-アセチルガラクトサミン(GalNAc)の二糖が数十回交互に繰り返し重合した直鎖状の糖鎖を基本骨格にもつ。生合成過程でGalNAc残基の大部分は、その6位もしくは4位が、コンドロイチン6-O-硫酸基転移酵素(C6ST-1)もしくは4-O-硫酸基転移酵素によって硫酸化される。我々は以前、脳の発生に伴うCS鎖の硫酸化パターンの変動を解析したところ、6硫酸化CSは発生初期に多く存在し発生に伴い減少するが、4硫酸化CSは発生に伴い増加し、結果として6硫酸化CSに対する4硫酸化CSの比率(4S/6S比)が顕著に増加することを見出していた。そこで昨年度、全身でC6ST-1を過剰発現するトランスジェニック(TG)マウスを作成した。成体の野生型マウス視覚野では、ほとんどのパルブアルブミン陽性抑制性神経細胞がWFAレクチン陽性のペリニューロナルネット(PNN)によって覆われるが、C6ST-1 TGマウスでは、WFA陽性のPNN数が減少していた。さらに、C6ST-1 TGマウスは成体でも、眼優位性の可塑性を維持していた。そこで本年度は、子宮内エレクトロポレーション法により、マウスの特定の神経細胞でCSの硫酸化構造を改変し、どの神経細胞のCSが眼優位性の可塑性に重要であるかを解明した。その結果、抑制性神経細胞でC6ST-1遺伝子を発現させると、WFA陰性となり、その代わりにCS56と呼ばれる6硫酸化CSに対する抗体で強く染色されるPNNが形成された。また、このCS56陽性のPNNをもつ抑制性神経細胞は、WFA陽性のPNNをもつ抑制性神経細胞に比べ電気生理学的に未成熟であることも分かった。さらに、CS56陽性のPNNをもつ抑制性神経細胞は、抑制性神経細胞の成熟に必要なホメオタンパク質Otx2の蓄積が低下していた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本年度は、昨年度の結果に基づき、コンドロイチン硫酸の硫酸化構造がどのように神経可塑性を制御しているのかを解析してきた。その鍵となる分子を見出したが、まだ論文報告に至っていない。来年度は、論文として報告できるよう誠意努力したい。

今後の研究の推進方策

コンドロイチン硫酸(CS)の硫酸化構造が変化したマウスでは、通常臨界期が終了している成獣でも高い眼優位可塑性を示すことを昨年度に見出した。眼優位可塑性には、抑制性神経回路の重要性が示されているので、抑制性神経細胞の成熟程度により、CSの硫酸化構造が変動する可能性がある。そこで、本年度に引き続き抑制性神経細胞周囲のマトリクス環境の変化が、どのように抑制性神経細胞の機能に影響を及ぼすかを今後も検討する。本年度、硫酸化構造依存的にCSPGと結合し、抑制性神経細胞の機能を制御する分子として、ホメオタンパク質Otx2を見出した。我々は既に、C6ST-1 を高発現するマウスでは、抑制性神経細胞におけるOtx2の取り込みが減少していることを示しているので、硫酸化構造の異なる合成CSオリゴ糖を用い、CSがOtx2の取り込みにどのように影響するのかを検証する。
また、神経突起伸長の制御に関与するCS機能ドメインの解明も行い、CS鎖による神経活動の制御機構を明らかにしていく。

  • 研究成果

    (24件)

すべて 2013 2012 その他

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (17件) (うち招待講演 7件) 備考 (2件) 産業財産権 (2件)

  • [雑誌論文] EXTL2, a member of EXT family of tumor suppressors, controls glycosaminoglycan biosynthesis in a xylose kinase-dependent manner.2013

    • 著者名/発表者名
      Nadanaka, S., Zhou, S., Kagiyama, S., Shoji, N., Sugahara, K., Sugihara, K., Asano, M., and Kitagawa, H.
    • 雑誌名

      J. Biol. Chem.

      巻: 288 ページ: 9321-9333

    • DOI

      10.1074/jbc.M112.416909

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Chondroitin sulfate is a crucial determinant for skeletal muscle development/regeneration and improvement of muscular dystrophies.2012

    • 著者名/発表者名
      Mikami, T., Koyama, S., Yabuta, Y., and Kitagawa, H.
    • 雑誌名

      J. Biol. Chem.

      巻: 287 ページ: 38531-38542

    • DOI

      10.1074/jbc.M111.336925

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Nephrocalcinosis (Enamel Renal Syndrome) caused by autosomal recessive FAM20A mutations.2012

    • 著者名/発表者名
      Jaureguiberry, G., et al.
    • 雑誌名

      Nephron. Physiol.

      巻: 122 ページ: 1-6

    • DOI

      10.1159/000349989

    • 査読あり
  • [学会発表] 糖鎖リモデリングによるコンドロイチン硫酸の機能解析2013

    • 著者名/発表者名
      北川 裕之
    • 学会等名
      日本薬学会第133年会
    • 発表場所
      横浜
    • 年月日
      2013-03-28 – 2013-03-30
    • 招待講演
  • [学会発表] コンドロイチン硫酸の構造変化による細胞機能制御2013

    • 著者名/発表者名
      北川 裕之
    • 学会等名
      生理学研究所セミナー
    • 発表場所
      岡崎
    • 年月日
      2013-03-16
    • 招待講演
  • [学会発表] グリコサミノグリカン鎖の機能解析に基づく疾患糖鎖生物学2013

    • 著者名/発表者名
      北川 裕之
    • 学会等名
      研究講演会(生化学工業株式会社、中央研究所)
    • 発表場所
      東京
    • 年月日
      2013-02-21
    • 招待講演
  • [学会発表] 新規のグリコサミノグリカン合成調節機構の脳神経系での役割2013

    • 著者名/発表者名
      北川 裕之
    • 学会等名
      文部科学省 科研費 新学術領域研究「統合的神経機能の制御を標的とした糖鎖の作動原理解明」第4回領域会議
    • 発表場所
      宮崎
    • 年月日
      2013-01-15 – 2013-01-17
  • [学会発表] コンドロイチン硫酸鎖による神経突起伸長制御とその作用発現機構の解明2013

    • 著者名/発表者名
      三上 雅久 他
    • 学会等名
      文部科学省 科研費 新学術領域研究「統合的神経機能の制御を標的とした糖鎖の作動原理解明」第4回領域会議
    • 発表場所
      宮崎
    • 年月日
      2013-01-15 – 2013-01-17
  • [学会発表] 発生・分化におけるコンドロイチン硫酸鎖とその受容体を介したシグナル伝達2012

    • 著者名/発表者名
      北川 裕之
    • 学会等名
      第85回日本生化学会大会
    • 発表場所
      福岡
    • 年月日
      2012-12-14 – 2012-12-16
    • 招待講演
  • [学会発表] 硫酸化糖鎖によるWntシグナルの調節機構2012

    • 著者名/発表者名
      灘中 里美 他
    • 学会等名
      第85回日本生化学会大会
    • 発表場所
      福岡
    • 年月日
      2012-12-14 – 2012-12-16
    • 招待講演
  • [学会発表] コンドロイチン硫酸による神経細胞移動の制御2012

    • 著者名/発表者名
      大庭 真美 他
    • 学会等名
      第62回日本薬学会近畿支部総会・大会
    • 発表場所
      西宮
    • 年月日
      2012-10-20
  • [学会発表] コンドロイチン硫酸の硫酸化パターンによる眼優位性可塑性の制御2012

    • 著者名/発表者名
      宮田 真路 他
    • 学会等名
      第35回日本神経科学大会
    • 発表場所
      名古屋
    • 年月日
      2012-09-18 – 2012-09-21
    • 招待講演
  • [学会発表] コンドロイチン硫酸を中心とした糖鎖による神経活動の制御機構2012

    • 著者名/発表者名
      北川 裕之
    • 学会等名
      包括型脳科学研究推進支援ネットワーク 夏のワークシップ(平成24年度)
    • 発表場所
      仙台
    • 年月日
      2012-07-24 – 2012-07-27
    • 招待講演
  • [学会発表] コンドロイチン硫酸による神経突起伸長の制御機構の解析2012

    • 著者名/発表者名
      三上 雅久 他
    • 学会等名
      包括型脳科学研究推進支援ネットワーク 夏のワークシップ(平成24年度)
    • 発表場所
      仙台
    • 年月日
      2012-07-24 – 2012-07-27
  • [学会発表] コンドロイチン硫酸の硫酸化パターンによる神経可塑性の制御2012

    • 著者名/発表者名
      宮田 真路 他
    • 学会等名
      包括型脳科学研究推進支援ネットワーク 夏のワークシップ(平成24年度)
    • 発表場所
      仙台
    • 年月日
      2012-07-24 – 2012-07-27
  • [学会発表] グリコサミノグリカン合成酵素の遺伝子改変マウスにおける表現型解析2012

    • 著者名/発表者名
      三浦 会里子 他
    • 学会等名
      包括型脳科学研究推進支援ネットワーク 夏のワークシップ(平成24年度)
    • 発表場所
      仙台
    • 年月日
      2012-07-24 – 2012-07-27
  • [学会発表] Perineuronal netに発現するHNK-1糖鎖抗原とそのキャリアータンパク質に関する研究2012

    • 著者名/発表者名
      藪野 景子 他
    • 学会等名
      包括型脳科学研究推進支援ネットワーク 夏のワークシップ(平成24年度)
    • 発表場所
      仙台
    • 年月日
      2012-07-24 – 2012-07-27
  • [学会発表] Basal-like型乳がん細胞のコンドロイチン硫酸鎖を介した浸潤メカニズム2012

    • 著者名/発表者名
      北川 裕之
    • 学会等名
      第4回次世代シグナル伝達医学グローバルCOE研究討論会
    • 発表場所
      淡路
    • 年月日
      2012-07-09 – 2012-07-10
  • [学会発表] コンドロイチン硫酸の硫酸化パターンによる神経可塑性の制御2012

    • 著者名/発表者名
      宮田 真路 他
    • 学会等名
      第59回日本生化学会近畿支部例会
    • 発表場所
      京都
    • 年月日
      2012-05-19
  • [学会発表] NHK-1STによるコンドロイチン硫酸鎖の付加制御に関する研究2012

    • 著者名/発表者名
      中川 直樹 他
    • 学会等名
      第13回 関西グライコサイエンスフォーラム
    • 発表場所
      大阪
    • 年月日
      2012-05-19
  • [備考] 神戸薬科大学 生化学研究室

    • URL

      http://www.kobepharma-u.ac.jp/~biochem/

  • [備考] 新学術領域「神経糖鎖生物学」

    • URL

      http://shinkei-tosa.net/

  • [産業財産権] 骨密度増加剤及び骨密度増加剤のスクリーニング方法2013

    • 発明者名
      北川 裕之,小池 敏靖
    • 権利者名
      北川 裕之,小池 敏靖
    • 産業財産権種類
      特許
    • 産業財産権番号
      特願 2013-031563
    • 出願年月日
      2013-02-20
  • [産業財産権] ヘパラナ-ゼ阻害剤及びヘパラナ-ゼ阻害剤のスクリーニング方法2013

    • 発明者名
      北川 裕之、灘中 里美、田村 純一
    • 権利者名
      北川 裕之、灘中 里美、国立大学法人鳥取大学
    • 産業財産権種類
      特許
    • 産業財産権番号
      特願 2013-075157
    • 出願年月日
      2013-03-29

URL: 

公開日: 2018-02-02  

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