研究領域 | 統合的神経機能の制御を標的とした糖鎖の作動原理解明 |
研究課題/領域番号 |
23110004
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
小松 由紀夫 名古屋大学, 環境医学研究所, 教授 (90135343)
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研究期間 (年度) |
2011-07-25 – 2016-03-31
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キーワード | 神経科学 / 糖鎖 / 可塑性 |
研究概要 |
視覚野のパルブアルブミン陽性細胞を取り囲むペリニューロナル・ネット(PNN)は感受性期の制御に関与すると考えられている。その主要な構成分子であるコンドロイチン硫酸(CS)鎖の6位の硫酸化(6S)を担う硫酸転移酵素を過剰発現させたマウス(C6ST-1 TG)を用いた昨年度までの研究により、硫酸化パターンの6S優位から4S優位への変化が眼優位可塑性の感受性期の終了を制御することが分かった。また、このTGマウスでは感受性期が延長し、感受性期型の眼優位可塑性と、感受性期に限局して起きるT 型Caチャネル依存性長期増強(T-LTP)が成熟期にもみられることも分かった。本年度は、2/3層錐体細胞からのホール・セル記録によりNi感受性T 型Caチャネル電流を解析した。この電流は、野生型マウスでは感受性期から成熟期にかけて減少したが、C6ST-1 TGマウスではこの減少が起こらず、成熟しても大きいままであった。従って、6S優位から4S優位への変化がNi感受性T 型Caチャネル電流を減少させ、T-LTPの発生を抑えると考えられる。 ケラタン硫酸(KS)もPNNを構成する分子であり、KS欠損マウスでは、感受性期において片眼遮蔽による遮蔽眼刺激に対する視覚応答の減弱は野生型マウスと同様に起きるが、非遮蔽眼刺激に対する視覚応答の増強が起こらないことが昨年までに分かった。本年度は、KS欠損マウスでT-LTPを調べたところ感受性期においても、そのLTPは起こらないことが分かった。また、Ni感受性T 型Caチャネル電流は、感受性期において野生型とKS欠損マウスで差がないことが分かった。この結果は、KS欠損マウスにおいてT-LTPの基本的な機構に異常はないが、その調節機構に障害があることを示唆している。従って、KSはその調節機構の制御に関与する可能性が強いと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コンドロイチン硫酸の硫酸化パターンの変化がT-LTPの発達に伴う減弱を引き起こすことが昨年度までの研究により判明したが、本年度の研究では、T 型Caチャネル電流が硫酸化パターンの制御を受けることを明らかにすることが出来た。また、ケラタン硫酸も眼優位可塑性の制御に関与することが昨年度までに分かったが、本年度の研究によりT-LTPの制御にも関与することが分かった。しかし、コンドロイチン硫酸、ケラタン硫酸によるT-LTPと眼優位可塑性の制御には明らかな相違があるので、コンドロイチン硫酸とケラタン硫酸の遺伝子改変マウスは糖鎖による視覚野可塑性の制御機構の解析に有用で、今後の解析が計画に近い形で進めることが出来ると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
コンドロイチン硫酸だけでなくケラタン硫酸も感受性期のシナプス可塑性の制御に重要な役割を果たすことが分かった。しかも、両者のT-LTP制御に果たす役割は異なることが明らかになったので、両者の遺伝子改変動物を使い、T-LTPがどのように制御されているかを明らかにする。この解析を通して、糖鎖による視覚野可塑性の制御を、細胞・分子のレベルで解明することを目指す。
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