研究領域 | 統合的神経機能の制御を標的とした糖鎖の作動原理解明 |
研究課題/領域番号 |
23110005
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
戸島 拓郎 独立行政法人理化学研究所, 脳科学総合研究センター, 研究員 (00373332)
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研究期間 (年度) |
2011-07-25 – 2016-03-31
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キーワード | コンドロイチン硫酸 / 軸索ガイダンス / 成長円錐 / 糖鎖 |
研究概要 |
成体中枢神経組織の損傷部位には長大な糖鎖とコアタンパク質からなるコンドロイチン硫酸プロテオグリカン(CSPG)が沈着し、これにより損傷軸索は再生できない。古くには、CS糖鎖が物理障壁となって軸索再生を阻害するとの考えが主流であったが、最近になって、CS受容体としてPTPsigma、LAR、CNTN1等が次々に同定され、「糖鎖がリガンドとして受容体を活性化する」という新しい糖鎖の作用機序が注目されている。しかし、糖鎖受容体下流のシグナル伝達については不明である。興味深いことに、CS糖鎖は培養下で軸索伸長作用を持つとの報告もあるため、発生組織においてCS糖鎖が両方向性の軸索ガイダンス因子としても機能する可能性がある。本課題では、軸索再生阻害や軸索ガイダンスに必要十分な糖鎖基本構造(糖鎖機能ドメイン)を決定し、これらが引き起こす一連の細胞内シグナル伝達経路を同定することを目標としている。CS糖鎖はグルクロン酸とN-アセチルガラクトサミンの2糖繰り返し構造から成り、その硫酸化パターンの違いによりCS-A、C、D、Eの4種類に分類される。これら硫酸化構造の異なる様々なCS糖鎖は、糖鎖機能ドメインの有力候補と考えられ、我々はこれらの中からCS-Eに焦点を絞って研究を行ってきた。昨年度までに、微細ガラス管からのpressure ejection法により培養下においてCS-Eの濃度勾配を作製し、これに対する成長円錐の応答性を解析した。その結果、CS-Eは培養条件の違いによって成長円錐を誘引または反発する活性を持つ(両方向性)軸索ガイダンス因子として働くことが明らかになった。続いて、薬理学的阻害実験により、CS-Eに対する誘引と反発のそれぞれを媒介する受容体の同定を試みた。その結果、誘引時と反発時では異なる組み合わせのCS受容体が機能することを強く示唆するデータを得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請書に記載したテーマ1の「糖鎖濃度勾配による軸索伸長阻害の分子メカニズム」に関しては、本課題のメインテーマである、糖鎖が軸索ガイダンス因子として働く際の機能ドメインとその受容体を絞り込むことに成功した。テーマ2の「動物個体レベルでの軸索再生実験」においては想定通りの結果が得られ、この結果を記載した論文が学術雑誌に受理された。
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今後の研究の推進方策 |
基本的には今後も研究計画書どおりに研究を遂行して行く予定である。次年度は、成長円錐上でのCS-E受容体活性化機構について詳細な解析を行う。具体的には、まず誘引条件下と反発条件下で成長円錐上に呈示される受容体セットの違いを免疫染色法などにより明らかにする。続いて、CS-E投与に応じて誘導される受容体間相互作用をproximity ligation法などにより検証する。さらに、異なる鎖長の合成CS-Eを用いて、受容体複合体形成に必要十分な最短鎖長(最小糖鎖機能ドメイン)を決定する。
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