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2012 年度 実績報告書

スフィンゴ糖脂質糖鎖による神経機能の健常性維持の分子機構

計画研究

研究領域統合的神経機能の制御を標的とした糖鎖の作動原理解明
研究課題/領域番号 23110008
研究機関名古屋大学

研究代表者

古川 鋼一  名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80211530)

研究分担者 鈴木 健一  京都大学, 物質-細胞統合システム拠点, 特定拠点教授 (50423059)
研究期間 (年度) 2011-07-25 – 2016-03-31
キーワードガングリオシド / ノックアウト / EMARS / シグナル / イメージング
研究概要

ガングリオシド糖鎖と相互作用する分子の同定をさらに幅広く実施して、その分子群の固有の機能と共に、作用機構を生化学的解析とイメージングにより検討した。前年度の成果をふまえ、通常の共焦点顕微鏡による糖脂質糖鎖との共局在や膜上動態を明らかにすると共に、詳細な動態イメージング解析の基本条件を明らかにした。
1. 新生児マウス脳からの初代培養グリア細胞膜上で、ガングリオシド近傍の分子を、enzyme-mediated activation of radical sources (EMARS) 反応と質量分析(MS) により同定した。培養アストロサイトでは、GD3を標的にしたEMARSにより、PDGF受容体αを同定し、免疫沈降実験でGD3との特異的結合を明らかにした。さらにPDGFRαがGD3との結合に基づいてより強い浸潤能を獲得することを示した。
2. 細胞膜脂質ラフトにおけるガングリオシドと神経伝達物質受容体の機能的関連の解明のために、シナプス伝達に重要なAMPA受容体に対するガングリオシド欠損の影響を糖鎖欠損マウスにより検討した。海馬切片を用いた長期増強(long-term potentiation、LTP)の検討の結果、GM2/GD2合成酵素ノックアウトの海馬切片では著明なLTP低下が認められた。一方、GD3合成酵素ノックアウトマウスでは、明らかな表現型異常が認められないにもかかわらず明瞭なLTPの低下が見られた。(宮崎大学 高宮博士との共同研究)
3. 糖脂質糖鎖の膜ミクロドメイン局在の動態を、1分子イメージングにより検討した。そのために、蛍光標識GM1と各種ガングリオシド特異発現細胞株を用いて、ガングリオシド2量体形成の解析を行ない、同一糖脂質同士の2量体形成をミリ秒レベルで証明した。さらにガングリオシドGM3, GD3の糖鎖蛍光標識により、超分解能イメージング解析を実施中である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

24年度内にグリアの培養系を確立して、種々の応用実験を実施する予定であったが、資材の入手難等により達成できなかったので、25年に繰り越して実施した。その結果、再現性よくマウス新生児脳からのグリア(アストロサイト、ミクログリア)などの初代細胞培養が可能となり、また大量培養についても容易に実施可能となった。よって、これを用いたEMARS法と質量分析法の融合によるガングリオシド近傍分子の同定や、グリアによるサイトカイン分泌能、刺激に対する反応等の検討が順調に進展した。

今後の研究の推進方策

1. ガングリオシド糖鎖と結合する分子の同定を、いくつかの細胞系と糖鎖抗原を用いてさらに展開して、同定された分子の機能解析と作用機構を、生化学的解析とイメージング解析を融合して明らかにする。 2. 新生児マウス脳からの初代培養アストロサイトのガングリオシドGD3、GD2近傍分子を、enzyme-mediated activation of radical sources (EMARS) 反応と質量分析(MS) により同定する。 3. GD3とPDGFRαの相互作用に基づく増強シグナルの分子機構を、Srcファミリーキナーゼ、アダプター分子、接着関連分子等を含めて検討する。 4. 同様にヒトグリオーマを用いて、ガングリオシドGD3を標的にしたEMARS反応を行ない、GD3近傍分子を同定する。同定される分子の中で興味ある分子に焦点化してその機能解析およびガングリオシドとの相互作用を検討する。 5. 培養マウスアストロサイト、マウスのin vivo グリオーマ組織等を用いて、GD3、PDGFRαなどの局在について検討し、共局在を明らかにする。とくにGD3および同定分子群の細胞先端部位(lamellipodia)への集積につき検討する。 6. ガングリオシドの神経可塑性における機能解析を行う。前年に引き続いて、種々のガングリオシド欠損マウス由来の脳組織を用いて、長期増強(Long term potentiation, LTP)を測定する。とくに異常表現型に乏しいGD3合成酵素ノックアウトマウスの海馬スライスを用いてLTPを測定し(宮崎大学 高宮博士との共同研究)、b-系列ガングリオシドの機能を解明する。 7.ガングリオシドとタンパク質との相互作用の1分子イメージングを行なう。また、GD3等の蛍光標識ガングリオシドが新たにできたので、超分解能イメージングによる2量体形成の動態解析を行う。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2013 2012

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (4件) 図書 (2件)

  • [雑誌論文] TLR4-MD-2 complex is negatively regulated by an endogenous ligand, globotetraosylceramide in vascular endothelial cells.2013

    • 著者名/発表者名
      Kondo, Y., Tokuda, N., Nishitani, C., Ohto, U., Akashi-TakKondo, Y., Tokuda, N., Nishitani, C., Ohto, U., Akashi-Takamura, S., Ito, Y., Uchikawa, M., Kuroki, Y., Miyake, K., Zhang, Q., Furukawa, K., Furukawa, K
    • 雑誌名

      Proc. Natl. Acad. Sci. USA

      巻: 110 ページ: 4714-4719

    • DOI

      10.1073/pnas.1218508110.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Clostridium perfringens Alpha-toxin Recognizes the GM1a/TrkA Complex.2012

    • 著者名/発表者名
      Oda, M., Kabura, M., Takagishi, T., Suzue, A., Tominaga, K., Urano, S., Nagahama, M., Kobayashi, K., Furukawa, K., Furukawa, K., Sakurai, J.
    • 雑誌名

      J. Biol. Chem.

      巻: 287 ページ: 33070-33079

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Proteomic analysis of ganglioside-associated membrane molecules: Substantial basis for molecular clustering.2012

    • 著者名/発表者名
      Hashimoto, N., Hamamura, K., Kotani, N., Furukawa, K., Kaneko, K., Honke, K., Furukawa, K.
    • 雑誌名

      Proteomics

      巻: 12 ページ: 3154-3163

    • DOI

      10.1002/pmic.201200279.

    • 査読あり
  • [学会発表] アストロサイトにおけるガングリオシド糖鎖の機能2013

    • 著者名/発表者名
      大海雄介、古川鋼一
    • 学会等名
      第86回日本生化学会大会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜(横浜市)
    • 年月日
      20130911-20130913
  • [学会発表] グリオーマモデルマウスにおけるガングリオシドの発現解析2013

    • 著者名/発表者名
      大川祐樹、古川鋼一
    • 学会等名
      第35回日本糖質学会
    • 発表場所
      大阪国際センター(大阪市)
    • 年月日
      20130805-20130807
  • [学会発表] ガングリオシド糖鎖による神経系細胞の機能調節メカニズム2013

    • 著者名/発表者名
      古川鋼一
    • 学会等名
      新学術領域研究 神経糖鎖 夏の班会議
    • 発表場所
      ラフォーレ琵琶湖(滋賀県守山市)
    • 年月日
      20130723-20130725
  • [学会発表] identification of co-clustering proteins with GD3 in mouse astrocytes2013

    • 著者名/発表者名
      大川祐樹、古川鋼一
    • 学会等名
      新学術領域研究 神経糖鎖 夏の班会議
    • 発表場所
      ラフォーレ琵琶湖(滋賀県守山市)
    • 年月日
      20130723-20130725
  • [図書] シグナル伝達 研究最前線2012 実験医学増刊302012

    • 著者名/発表者名
      古川鋼一、浜村和紀、大川祐樹、大海雄介、古川圭子
    • 総ページ数
      222(111-116)
    • 出版者
      実験医学
  • [図書] GM3合成酵素欠損症、日本臨床 別冊 新領域別症候群シリーズ20「先天代謝異常症候群」2012

    • 著者名/発表者名
      古川鋼一、大海雄介、大川祐樹、徳田典代、古川圭子
    • 総ページ数
      910(617-620)
    • 出版者
      日本臨床社

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公開日: 2015-05-28  

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