研究領域 | 統合的神経機能の制御を標的とした糖鎖の作動原理解明 |
研究課題/領域番号 |
23110008
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
古川 鋼一 中部大学, 生命健康科学部, 教授 (80211530)
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研究分担者 |
鈴木 健一 京都大学, 物質-細胞統合システム拠点, 特定拠点准教授 (50423059)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ガングリオシド / 糖脂質 / 細胞膜 / 相互作用 |
研究実績の概要 |
本研究では神経系に高レベルに発現する酸性スフィンゴ糖脂質、ガングリオシドと神経系細胞の膜上で相互作用する膜分子を、次世代EMARS法を用いて同定して、それらのガングリオシドとの相互作用の動態をイメージング技術により解析した。アストサイト(グリオーマ)においては、GD3関連分子としてPDGF受容体alphaを、GD2関連分子としてEphA2を同定した。一方、神経内分泌系細胞である小細胞肺癌細胞においては、GD2に関連するESCT2分子を同定した。これらの膜分子につき、おもに培養細胞、グリオーマに関しては脳組織を用いて、ガングリオシドとの共局在の動態のイメージング解析を共焦点顕微鏡にて行った。 ガングリオシドGD3に会合するPDGF受容体に関しては、培養細胞膜、能腫瘍組織ともに細胞膜に共発現が見られ、また、相互に会合することが免疫沈降とTLC-免疫染色実験で示された。この複合体に、さらにSrcファミリーのYes が会合することも示された。一方、小細胞肺癌細胞においては、GD2とASCT2が会合することが、ASCT2の膜発現に必須であることが示されるなど、両者の結合の新規の意義が新たに解明された。PDGF受容体alphaの場合には、Yesのリン酸化を介した、paxillinの活性化が惹起されて、グリオーマ細胞の浸潤性の亢進に至ることが示唆された。また、ESCT2 の場合には、その発現亢進がGD2のもとでmTORを介する転写活性化を誘導することが示され、癌形質増強のシグナルの基盤を形成することが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
目ざしていた、スフィンゴ糖脂質との会合分子として、神経系細胞に発現する膜分子の同定が展開され、また、それらと糖脂質との共局在がイメージング解析で明らかになったから。
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今後の研究の推進方策 |
これまで、おもに神経系の樹立細胞株を用いたEMARS反応によって、糖脂質糖鎖との相互作用分子を同定してきたが、今後、それぞれの細胞株に対応する脳神経組織からの初代培養細胞系を用いて同様の膜分子の同定作業を行う予定である。よって、変異細胞株と正常細胞ラインとの間の、スフィンゴ糖脂質反応膜分子群のプロファイルを比較検討することによって、細胞の分化段階、悪性転化等による細胞膜ミクロドメインでのシグナル調節メカニズムの具体的な作用機構のさらなる解析を展開したいと考えている。
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