計画研究
これまで、b-系列ガングリオシドを全て欠損するGD3合成酵素遺伝子ノックアウト(KO)マウスを作成して解析してきたが、舌下神経再生系での再生不良が認められた以外は、著明な異常を認めなかった。行動異常解析を本格的に行い、幾つかの興味深い結果が得られた。GD3合成酵素遺伝子KOマウスは、とくにRota-rodテストなどにおいて、著明な機能低下が認められたが、興味深いことに雄マウスにおいて神経機能低下が際立っていた。また、海馬スライスによるlong term potentiation (LTP)の解析結果により、明らかなLTP低下が見られ、memory 機能の低下が示唆された(高宮考悟博士との共同研究)。さらに、この変異マウスで血清レプチンレベルの異常低下が認められたため、脂肪細胞の初代培養系を樹立して、レプチン分泌に対するb-系列ガングリオシドの制御機能を解析した。その結果、b-系列ガングリオシドが白色脂肪組織からのレプチン分泌に必須であり、KOマウスの白色脂肪組織におけるレプチンの蓄積が、そのことを支持する知見と考えられた。さらに視床下部の弓状核ニューロンにおけるレプチン受容体ObRの機能解析を行ったところ、KOマウスではレプチン刺激なしでもATAT3リン酸化の傾向が認められ、刺激時にはより強い反応が認められた。このことは、視床下部ニューロン由来細胞株N-41のGD3合成酵素cDNA導入による糖脂質糖鎖リモデリング実験でも証明された。すなわち、弓状核ニューロンはb-系列ガングリオシド欠損により感受性が亢進しており、そのためにレプチンレベルの低下があっても肥満を示さないことが示唆された。これらの結果から、ガングリオシドの糖鎖が、代謝調節において末梢脂肪組織や中枢神経系にまたがって恒常性の維持に重要な役割を果たしていることが示された。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 4件、 査読あり 5件、 謝辞記載あり 5件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (8件)
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