研究領域 | 統合的神経機能の制御を標的とした糖鎖の作動原理解明 |
研究課題/領域番号 |
23110009
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
柚崎 通介 慶應義塾大学, 医学部, 教授 (40365226)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | AMPA受容体 / エンドサイトーシス / エキソサイトーシス / 小脳 / LTD / LTP / ライソゾーム / マウス |
研究実績の概要 |
中・長期に持続する記憶・学習の実体は、シナプス後部におけるAMPA 型グルタミン酸受容体の輸送によって担われており、その制御機構の解明は神経科学の最重要課題の1 つとなっている。AMPA 受容体の輸送は、細胞内分子のみでなく、脂質ラフトや細胞外基質に存在する糖鎖とAMPA受容体との相互作用によって制御されるがその詳細は不明である。また、より長期に持続する記憶にはシナプス形態変化が伴い、成熟とともに神経細胞周囲に発達するプロテオグリカンが関与することも分かってきた。本研究では小脳をモデルとして、機能的・形態的シナプス可塑性を制御する分子機構を、糖鎖科学と脳科学的アプローチを融合することによって解明する。 神経活動亢進に伴うAMPA受容体輸送経路について明らかにするために、長期増強(LTP)刺激によって樹状突起の棘突起にエキソサイトーシスされてくるAMPA受容体が存在する細胞内プールについて引き続き検討を加えた。興味深いことにこのプールは酸性でかつカテプシンが陽性であり、ライソゾームの性質を持っていることがわかった。逆にライソゾームへの輸送を阻害するとLTPが障害されることも分かってきた。現在、神経細胞におけるライソゾームエキソサイトーシス経路とその意義についてさらに解析を進めている。一方、小脳プルキンエ細胞における長期抑圧(LTD)と糖鎖との関連について検討するために、まず発達早期の幼若プルキンエ細胞に子宮内電気穿孔法によりcDNAやshRNAを導入し、かつ発現誘導できるシステムを開発した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで、幼若プルキンエ細胞に遺伝子導入を行う方法が無かったため、今回確立した子宮内電気穿孔法によるcDNAやshRNA導入法は強力な武器となることが期待できる(Eur J Neurosci, 2012)。一方、神経細胞におけるライソゾームエキソサイトーシス経路の解析については、あと一歩で論文化できるところまで進んだ。以上のことから「おおむね順調に進展している」と自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
ライソゾーム経路からのAMPA 受容体のエキソサイトーシスの生理的意義については、AMPA 受容体の糖鎖付加の違いを中心に解明を進める。また、ライソゾーム様プールからのAMPA受容体エキソサイトーシスとLTPの成立との因果関係を確立し、論文化を図る。 神経細胞における受容体は、通常は一番長い樹状突起の根元にある。このことからゴルジ体が、細胞膜や膜タンパク質を供給することにより、一方向性樹状突起の形成・分化に関与することが示唆されている。しかしその因果関係や分子機構やよく分かっていない。そこで、小脳プルキンエ細胞をモデル細胞として、樹状突起発達に伴うゴルジ体の変化を可視化するとともにその生理的意義を明らかにする。ゴルジ体ストレス応答に関与する分子機構についてこれまでに解明を進めてきた吉田班員と共同研究を進め、ゴルジ体の機能を光遺伝学的的方法によって制御するシステムの開発を進める。
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