研究領域 | 統合的神経機能の制御を標的とした糖鎖の作動原理解明 |
研究課題/領域番号 |
23110010
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
高宮 考悟 宮崎大学, 医学部, 教授 (40283767)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | シナプス可塑性 / 高次脳神経機能 / グルタミン酸受容体 |
研究実績の概要 |
海馬等の神経細胞において、神経外微小環境における糖鎖のシグナルがシナプスに局在するチャンネルの機能をどのように修飾し、可塑性の形成にどのような影響をあたえるのかを検討している。具体的には、細胞表面にあるグルタミン酸受容体の細胞外ドメインがどのような糖鎖修飾をうけ,それがチャンネル機能へどのような影響を及ぼすか、またシナプス膜や神経外微小環境に局在するプロテオグリカンがシナプス可塑性の制御にどのように関与するかを検討する。さらに記憶・学習といった高次脳神経機能への糖鎖情報の重要性を明らかとし、その神経機能と結びついた個々の糖鎖暗号解読をめざす。本年度は、AMPA型グルタミン酸受容体のGluA1サブユニットのN型糖鎖修飾のチャンネル機能への影響に焦点を絞って解析を行った。GluA1 cDNAをを用いて、N型糖鎖修飾を受けると考えられるアミノ酸に変異を加え、その遺伝子を細胞で発現させパッチクランプ法にて解析した。結果としてある特定のアスパラギンにアミノ酸置換をした場合にチャンネル活性に変化をきたすことが示唆された。またこのような影響は、培養神経細胞でも観察されいくつかの糖鎖構造を消化する酵素にて誘発されていることから、複数の機序により糖鎖構造を介してチャンネル活性が制御されている可能性が示唆された。またGluA1をshRNAにてノックダウンした培養神経細胞においても同様のAMPA型グルタミン酸受容体のチャンネル活性の変化がみとめられた。AMPA型グルタミン酸受容体の他のサブユニットにおいてもN型糖鎖修飾部位のアミノ酸配列が保存されていることより、AMPA型グルタミン酸受容体のGluA1以外のサブユニットにおいても同様のN型糖鎖修飾の機能が影響を及ぼしていることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在得られている結果が大変興味深く、さらに詳細に解析することが非常に重要であると考え、その研究課題に集中して解析を行っている。従って、そのプロジェクトは、進んでいるが、他の研究項目の進行が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
前年度までに、AMPA型グルタミン酸受容体の細胞外ドメインのN型糖鎖修飾はチャンネル活性に大きな影響を及ぼすことが明らかとなった。今年度以降は、これまでに得られた結果をさらに進めるために、1)糖鎖のチャンネル活性に及ぼす影響の薬理学的解析による詳細な情報収集、2)糖鎖の影響の分子機構の解明、3)GluA1以外の他のサブユニットへの糖鎖の影響、3)培養神経細胞や急性脳スライスを用いた解析、4)チャンネルの各種状態におけるN型糖鎖による構造的な影響を結晶解析を用いた解析、などを行う予定である。さらに、研究が遅れている細胞外よりのシナプス可塑性に対する影響を研究するために、各種消化酵素を用いて神経機能を解析するシステムを立ち上げて、電気生理学的・細胞生物学的解析に加え、行動解析を行うことにより、細胞外からの制御機構の解析を行う。また、膜上に存在するプロテオグリカンによるMPA型グルタミン酸受容体の神経活動依存的なトラフィッキングに関しては、それらの脳内における局在を観察しつつ、培養神経細胞を用いた細胞生物学的、電気生理学的な機能解析を行うことにより、それらのシナプス可塑性における重要性を探索する。
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