AMPA型グルタミン酸受容体のGluA1サブユニットの細胞外には6箇所のN型糖鎖修飾を受ける部位があるが、以前よりこの1箇所の糖鎖修飾をできなくすると、AMPA型グルタミン酸受容体のチャンネルとして特徴的な脱感作現象が阻害されることを示した。さらにこの部位は、他のAMPA型グルタミン酸受容体におけるN型糖鎖修飾の部位と異なり、約7割がもともと糖鎖修飾を受けていないことが明らかとなった。さらに細胞表面に存在する糖鎖修飾を受けていないGluA1サブユニットは、細胞膜上の脂質ラフトに局在することがわかった。神経細胞培養を用いた実験から、これらもともと糖鎖修飾を受けていないGluA1サブユニットは、もともと細胞内にプールされており、刺激に呼応して細胞表面に表出しシナプス後膜上の脂質ラフトに捕捉されることが明らかとなった。糖鎖修飾されていないGluA1サブユニットは、脱感作現象を欠くことから、シナプスにおいてこれらは、チャンネルとしてシナプス前からの神経伝達物質の刺激に呼応して、持続的な神経伝達を担うことにより、個々のシナプスにおいて神経伝達効率の個性をもたらすとともに、糖鎖修飾されていないGluA1サブユニットのシナプスへの挿入によりシナプス可塑性を制御する新たなメカニズムであることが示唆された。また、GluA1における他の糖鎖修飾の部位を解析し、これらの部位が受容体の細胞表面への輸送や4量体形成に重要であることがわかった。さらにこれらは、他の糖鎖修飾されているAMPA型グルタミン酸受容体サブユニットとヘテロ4量体を形成することにより、その失われた機能が回復することが明らかとなった。
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