計画研究
1)26SプロテアソームのRpt3サブユニットのATPase部分をコードするエクソンをloxP配列で囲んだfloxed Rpt3マウスを作製し、これとVAChT-Creマウスを交配させることによって、運動ニューロン特異的にRpt3を欠損するマウスを樹立し、UPSの破綻によって、進行性に運動機能障害を生じ、TDP43,FUS陽性細胞質内封入体を形成し、病理学的にもALSに酷似する運動ニューロン病マウスモデルを確立した(Tashiro et al.JBC, 2013)。2) TDP-43の構造解析による孤発性ALSの病的パスウェイの同定①TDP-43(野生型、FALS型、細胞質型)の過剰発現で、発現変動を示す因子の解析を進め結果、24時間後と5日後の両者で発現低下しているシナプス後肥厚(PSD蛋白質)を同定した。本タンパク質の機能解析実験を開始し、評価系としての不死化運動ニューロン細胞の分化型培養法を確立した。②TDP-43のRNA結合ドメイン(RRM1,RRM2)の構造解析により、各々の生理的コンフォメーションから逸脱した病原構造に至る責任ドメインを同定し、特定のβシート構造がストレス下のTDP-43の異常会合に関与し、RRM1ドメインの異常会合がTDP-43プロテイノパチーの多くの細胞病理学的再現することから、TDP-43病原性獲得の分子基盤である可能性を指摘し国際学術誌に報告した(Shodai et al, JBC 2013)。③In vitro ubiquitinationとreversible covalent linked immunoprecipitation (ReCLIP法)を組み合わせ、TDP-43に結合するユビキチンリガーゼ複合体を同定した。
2: おおむね順調に進展している
運動ニューロン特異的プロテアソーム欠損マウスは孤発性ALSの臨床症状と病理所見を忠実に再現した初めてのモデルである。プロテアソームによる蛋白質分解異常が孤発性ALSの原因に関与していることを示す強い実験的証拠を提出したことで、今後孤発性ALSの病因解明が進むものと考えている。TDP-43の病原構造への変換に関わる局所分子構造異常を明らかにし、病原性TDP-43を特異的に認識する抗体の開発に成功し、国際学術誌に報告した。さらにこの構造解析結果に基づいてin vitroのTDP-43プロテイノパチーモデルを確立し、今後ハイスループットスクリーニングやあらたなin vivoモデルへの応用性を広げた。
1) 運動ニューロン特異的プロテアソーム欠損マウスの運動ニューロンのみをレーザーマイクロダイセクションで切り取ったものから、すでにRNAの抽出を終えている。RNAの品質チェックを経て、マイクロアレイによる解析を行う。発現上昇や発現低下を示す遺伝子はUPS機能障害の下流に位置し、運動ニューロン死がもたらされる経路に位置する可能性がある。発現上昇している遺伝子産物は、ALSでの運動ニューロンの封入体の構成成分である可能性があり、本マウス脊髄での免疫染色で運動ニューロンに蓄積していることが確認出来れば、次にALS患者剖検サンプルでの運動ニューロンでも蓄積しているかを検討することにより新たなマーカーの候補となり得る。2) TDP-43の過剰発現によって発現低下するPSD蛋白質の機能低下による神経細胞の異常現象について細胞生物学的に、さらに動物実験によって検討する。さらに新たに同定したTDP-43の結合タンパク質の解析を進め、TDP-43分解系や凝集体形成における役割を検討する。
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