研究領域 | 脳内環境:恒常性維持機構とその破綻 |
研究課題/領域番号 |
23111003
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
服部 信孝 順天堂大学, 医学部, 教授 (80218510)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 封入体 / 神経細胞死 / オートファジー / タンパク質分解異常 / パーキンソン病 / Lewy小体 / PINK1 / Parkin |
研究実績の概要 |
Parkinはユビキチンリガーゼであることからタンパク分解系の異常を背景に1)凝集体形成メカニズムと2)ドーパミン放出への関与をテーマに研究を行ってきた。遺伝性パーキンソン病の病態にオートファジー誘導不全による異常ミトコンドリアの蓄積が注目されており、タンパク分解系とミトコンドリア機能異常が神経変性において重要な要因となっていると推定される。Parkinは膜電位の低下した損傷ミトコンドリアをミトファジーの発動によって分解し、細胞内の環境維持に貢献していると考えられる。 本年度はミトファジーが誘導されるためには細胞質に局在するParkinがミトコンドリアに移行することが必須であるが、その際に膜電位依存的にPINK1がParkinのUblドメイン(Ser65)をリン酸化することが契機になることを明らかにした。さらには、そのようなリン酸化によりミトコンドリア分解の効率も上昇する。一方で病的変異ではこのようなリン酸化のシグナルの影響を受けないことを証明した。 次に、Parkinがドーパミン放出機構にいかに影響を与えるかを検討している。Parkin ノックアウトマウス(Parkin KO)初代培養細胞(膵β細胞、大脳皮質細胞)について分泌顆粒放出能、SNARE蛋白の発現、局在、構造変化を全反射蛍光顕微鏡(TIRFM)を用いて検討したところ、Parkin KOの初代膵β細胞では有意に放出能が低下していた。Parkin KO 膵臓β細胞において細胞骨格タンパク質(septin,actin)の細胞膜上でのポリマー化を認め、大脳初代培養細胞においてもシナプス領域に同様な所見が得られたことから、Parkinの欠損は細胞骨格の構造異常をきたし神経内分泌細胞の放出機構に広く関与するものと推測された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
パーキンソン病の分子病態機序の一端を細胞レベルで証明し報告することができた。
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今後の研究の推進方策 |
In vitoでの研究成果をマウスに応用し研究を推進する。さらに凝集体の構成成分やそれら代謝に関与する因子を欠損するモデルマウスを作製し凝集体の形成過程を解明していく。
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