計画研究
若年発症遺伝性パーキンソン病の病態としてオートファジーリソソーム系の関与が有力であり、PINK1/Parkinの機能不全によるミトコンドリア品質管理の破綻もその一端である。一方で、我々は本邦における若年発症遺伝性パーキンソン病PARK9(ATP13A2のF182L変異)の家系を見出してきた。その原因遺伝子産物ATP13A2がリソソームに局在するとの知見から、本疾患においてもタンパク分解系の異常が関与しているであろうとの仮説のもと若年発症遺伝性パーキンソン病に共通の病態を明らかにすると共に凝集体の形成の有無を検討した。培養細胞にATP13A2変異体を一過性に発現させることにより局在の変化を観察したところ予想とは異なり小胞体に局在することを確認した。そこで安定抑制細胞株を採取し、リソソームの機能を生化学的に評価するとともに、電顕により凝集体や微細構造物の蓄積を観察した。さらにATP13A2コンディショナルノックアウトマウスにて同様な解析を行った。ATP13A2は本来リソソームに局在するが、変異タンパク質は小胞体からリソソームに輸送されないことによりリソソームの機能異常をきたすことが推測された。そこでATP13A2遺伝子を抑制すると、神経系細胞特異的に細胞死を誘発することが明らかとなった。ノックダウン細胞には膜様構造物や異常なリソソームが多数存在し、カテプシンD活性が有意に低下した。同様な膜様構造物はノックアウトマウスにも観察された。これらの現象はリソソームの機能不全による二次的な変化と考えられた。タンパク質分解系の異常が凝集体形成に関与することが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
遺伝性パーキンソン病の分子病態の一端が明らかになったため。
遺伝性パーキンソン病の遺伝産物に着目しその病態解析を推進してきたが、いまだ謎の多い孤発性パーキンソン病におけるsynuclein凝集のメカニズムに迫る。
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