計画研究
本年度の研究では、1)p62/NBR1を介する異常なリソソームの選択的オートファジー:カテプシンD (CD)を欠損する脳の神経細胞では、オートファジーが誘導され異常なリソソーム(GROD)がオートファゴソームと共に核周囲に蓄積する。このGRODはオートファゴソームに取り込まれるので、p62/NBR1の局在を検討したところ、GRODの限界膜上にubiquitinと共に局在することが分かった。GRODは電顕で観察する限りニューロンの細胞体と樹状突起には見られるが軸索には認められない。P62/NBR1もGRODと同様に軸索には侵入しないことも明らかとなった。2)LC3A/Bのダブル欠損マウス脳の低酸素脳虚血障害:生後7日齢マウスの片側総頚動脈を結紮し、1時間後に低酸素(92% N2、8%O2)環境下に25分間放置。海馬錐体細胞は24時間から3日後までに死に至る。この時オートファジーが誘導されるが、多くの細胞はカスパーゼ−3は陰性で死ぬ。LC3A/Bを欠損するマウスではほとんどの細胞が生存する。丁度Atg7欠損マウスと同様であった。この結果は、低酸素脳虚血後の海馬錐体細胞の死はオートファジー性であることを示している。3)Atg9欠損マウスの解析:Nestin-Creマウスを掛け合わせ脳特異的にAtg9を欠損するマウスを得た。生まれてくるマスは10%前後と少なく、胎生期に死に至る例があることが推測された。出生したマウスは小さく、震えと尻尾の硬直が見られ、15日齢で見るとヨタヨタした歩き方を呈した。さらに、limb clasping reflexを呈することが分かった。胎生14.5日齢胎仔より得た大脳皮質初代培養ニューロンで見ると、Atg9欠損株より得た細胞は軸索をまっすぐに伸ばさずとぐろを巻くことが分かった。実際、生後脳を見ても一部脳梁の形成不全、神経線維数の減少がみられた。
2: おおむね順調に進展している
Atg9の中枢における欠損マウスの解析が進み、軸索の伸展不良、脳梁形成不全、異常な神経反射、けいれん発作等が見られること、また胎生期に死に至るケースも多いことが分かった。軸索終末におけるオートファゴソームの形成は、全く抑制され、週末部が大きく拡大することも分かってきた。Atg9の役割に加え、DFCP1とsyntaxin-17をそれぞれ欠損するマウスを増やし始めており、これらの解析も進むものと考えている。
本研究の推進は、新学術領域研究(脳内環境)の計画研究班の一員として、“神経軸索におけるタンパク分解機構とその破綻”についての研究を通して実施する。既に、計画班員同士での共同研究も進めている。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (15件) (うち査読あり 15件、 オープンアクセス 15件、 謝辞記載あり 6件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 2件)
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