研究領域 | 脳内環境:恒常性維持機構とその破綻 |
研究課題/領域番号 |
23111006
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
山中 宏二 独立行政法人理化学研究所, 運動ニューロン変性研究チーム, チームリーダー (80446533)
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研究分担者 |
三澤 日出巳 慶應義塾大学, 薬学部, 教授 (80219617)
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キーワード | 神経変性疾患 / グリア / 脊髄 / 細胞外環境 |
研究概要 |
本研究では筋萎縮性側索硬化症(ALS)を病態モデルシステムとして、神経変性に対する生体応答の主役としてのグリア細胞による変性神経細胞の認識機構や生体応答機構、病巣の伝播機構の解明を目指す。 末梢マクロファージと同様に、近年神経系においてもミクログリア活性化は、細胞障害性(M1)と組織保護的(M2)の両面性があると考えられつつある。そこで、ALSモデルとして変異SOD1G93Aマウス脊髄を用いた定量的PCR法によって炎症関連分子群を検出し、ミクログリアの活性化様式の検討を行った。変異SOD1マウスでは、発症期からM1 microgliaから放出されるTNFα、IL-1βなどの炎症性サイトカインの発現上昇がみられ、疾患進行とともにその発現は上昇した。一方、細胞保護性と考えられるM2 microgliaに由来する分子には有意な変動がみられないものが多かった。M1/M2への誘導因子のなかで抑制性サイトカインとしての機能が知られるTGF-β1は終末期において発現上昇が見られた。これらの炎症関連分子の発現プロファイルに関してはmRNA、ELISA法などを用いた多面的な検討を次年度も引き続き行う。また、TGFβ1の神経変性における役割を検証するために、アストロサイト特異的にTGFβ1を発現するGFAP-TGFβ1マウスと変異SOD1G93Aマウスの交配実験を開始し、グリア細胞応答や生存期間への影響の検討を行っている。興味深いことにGFAP-TGFβ1陽性個体では、疾患進行が加速する傾向がみられた。さらに、強力な免疫修飾物質オステオポンチンのALSモデルマウスの病態進行に伴う発現変動を解析したところ、発症前ではアルファ運動神経で強い発現がみられるのに対して、病気の進行に伴い細胞外の顆粒状沈殿およびミクログリアでの発現が観察され、脊髄環境の修飾因子としての可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究遂行に必要な研究機器の購入、研究協力者の採用活動を順調に行うことができた。また初年度における研究課題の遂行を適時的に行えた。
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今後の研究の推進方策 |
分担研究者のグループとの定期的な研究打ち合わせを行い、さらに領域内共同研究をすすめることにより、研究課題を多面的に推進していく計画である。
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