研究領域 | 脳内環境:恒常性維持機構とその破綻 |
研究課題/領域番号 |
23111006
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
山中 宏二 独立行政法人理化学研究所, 運動ニューロン変性研究チーム, チームリーダー (80446533)
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研究分担者 |
三澤 日出巳 慶應義塾大学, 薬学部, 教授 (80219617)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 神経変性疾患 / グリア / 脊髄環境 |
研究実績の概要 |
本研究では筋萎縮性側索硬化症(ALS)を病態モデルシステムとして、神経変性に対する生体応答の主役としてのグリア細胞による変性神経細胞の認識機構や生体応答機構、病巣の伝播機構の解明を目指す。 自然免疫アダプター蛋白TRIFを欠損したSOD1G93Aマウスは著しく疾患進行が加速し、平均寿命は約15%短縮したが、その機序の一つとして、ケモカインの発現低下を見いだし、FACSを用いた脊髄病巣に浸潤する非神経細胞を単離、表面抗原、サイトカイン産生能を検出する実験系を構築し、浸潤するリンパ球サブセットの減少を見いだした。 TGFβ1の神経変性における役割を検証するために、アストロサイト特異的にTGFβ1を発現するGFAP-TGFβ1マウスと変異SOD1G93Aマウスの交配実験を行い、SOD1G93A/TGFβ1マウスはG93Aマウスに比べ疾患進行が加速して、生存期間が短縮した。G93A/TGFβ1マウス腰髄ではMac2陽性ミクログリアは減少し,ミクログリアのCD68,CD11c,IGF-Iの発現が低下した。G93A/TGFβ1マウス脊髄に浸潤するIFN-γ/IL-4産生T細胞比は増加した。TGF-β1の慢性的発現はミクログリアの脱活性化、T細胞の機能修飾を介してIGF-I低下をきたし、ALSマウスの疾患進行を加速することが示唆された。 運動ニューロン由来の炎症・免疫調節物質の候補であるオステオポンチン(OPN)の欠損マウスと変異SOD1マウスの交配実験を行い、OPNが欠損したマウスではALS発症が有意に遅延することを発見し、複数の指標(筋力測定、グリア増殖、サイトカイン発現など)により確認した。また、OPNの受容体であるCD44について解析し、OPN/CD44シグナリングがグリア細胞の遊走や貪食などに大きく影響することを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
フローサイトメーターの新規購入により,脊髄における免疫細胞,グリア細胞の新たな検出実験系を構築できた.さらに,研究員の雇用も順調にすすみ,研究計画は順調に実行されている.
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度には研究代表者の名古屋大学への移動が内定しているため,研究試料,機器,人員のスムーズな移動に注力するとともに,本研究計画が順調に進展するように配慮する.
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