計画研究
平成26年度は、タウタンパク病変を蛍光およびPETで画像化するプローブの結合性を指標として、各種モデルマウスと様々なタウ陽性神経変性疾患の患者におけるタウ病変の構造・化学的特性(strain)の違いを明らかにすることを第一の目標とした。また、タウ病変モデルマウスとオートファジー関連因子p62欠損マウスの交配マウスの病態変化を、前年度に引き続きイメージングにより追跡すると共に、摘出脳の病理生化学解析を実施し、p62がタウ病態を加速するメカニズムの解明に取り組むことを第二の目標とした。タウstrain解析は、タウ病変モデルマウスとしてPS19ならびにrTg4510マウスを用いて、本研究で作製されたプローブPBB3とその誘導体に加えて、他の研究グループにより作製されたタウPETプローブの病変への結合性を、蛍光染色およびオートラジオグラフィーで比較した。その結果、PS19とrTg4510では各種プローブの結合性が異なることが示された。同様に、アルツハイマー病、非アルツハイマー型認知症など、多様なタウ疾患のタウ病変への結合性を調べたところ、強く結合するプローブが病変により異なることが判明した。従って、タウ凝集体のstrainを各種プローブの結合性を指標として判別可能であることが示唆された。p62とタウ病態の関連性検討は、マウスの経時的なタウ病変・神経炎症のPETおよび形態MRIを施行して、PS19マウスではp62欠損によりPET陽性タウ病変の増加をきたさずに神経炎症と脳萎縮が加速することが明らかになった。摘出脳の組織生化学解析により、p62欠損でオートファジーが異常をきたすと、タウのオリゴマーが特に樹状突起で増加し、神経変性をもたらすことが示された。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画通り、各種プローブを用いて病変ごとのタウstrainの違いを明らかにできたことから、研究は順調に推移している。オートファジー関連の研究も、PETで検出されないオリゴマーレベルのタウ集積がp62によって制御されていることが示され、病態形成について重要な知見が得られ、予定通りの成果があがっている。
今後はタウ病変プローブの種類を増やして結合性を比較すると共に、病変を構成するタウstrainと神経炎症の関連性についても検討する。そのため、神経炎症マーカーであるトランスロケータータンパク(TSPO)を高感度で画像化するPETプローブの開発にも取り組むも行う。さらにTSPOの末梢および中枢のステロイド産生への関与を、欠損マウスなどを用いて明らかにする。オートファジー関連の病態制御とイメージングに関して、p62に結合し、オートファジー活性を変化させる低分子リガンドの開発を実施する。同リガンドのPETプローブとしての応用も検討する。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 謝辞記載あり 4件) 学会発表 (14件) (うち招待講演 13件)
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