計画研究
本新学術領域の目的は「上皮管腔組織の形成・維持と破綻の分子機構を明らかにする」ことである。上皮管腔組織は「非極性化上皮細胞集団が間質へ肥厚し伸長と分岐を繰り返した後に極性化して管腔構造を構築する形式」と「極性化上皮細胞が内腔を有したまま伸長し分岐する形式」といった二つの異なった形式によって形成されると考えられる。ところが、それら上皮管腔組織を構成する個々の上皮細胞を見てみると、それらの分化・成熟の機序には類似点が多いことがわかる。すなわち、どちらの形式であっても上皮管腔組織が形作られるためには、まず、組織幹細胞から上皮細胞が分化し、それらが機能的かつ形態的に成熟する必要がある。そこで本研究では、二種類の管腔形成における共通の分子基盤と相違を理解するために、管腔組織を形成する上皮細胞の供給源である組織幹細胞に着目し、その維持や上皮細胞への分化決定を制御する分子機構を明らかにする。また、正常もしくは異常な組織幹細胞から分化した上皮細胞をもとに生体外で管腔形成を誘導する方法を開発し、組織幹細胞から三次元の立体構造をもった管腔組織を構築する。本研究では、発生段階の肝臓の組織幹細胞である肝芽細胞に着目して研究を進める。平成25年度では、肝芽細胞の未分化性と分化を制御するシグナル分子やマイクロRNAの役割を明らかにしつつあるだけでなく、誘導型Cre/loxPシステムを用いた細胞系譜追跡実験により、慢性肝炎で門脈周囲に出現する偽胆管様構造(細胆管反応)が、Notchシグナルを介した肝細胞の運命転換によって生じることを明らかにした。以上の研究成果は、組織幹細胞を用いた再生医療の進展や新しい医療技術の開発に貢献することが期待される。
2: おおむね順調に進展している
これまでの研究では、遺伝子改変マウスの作製や解析に時間を要しているが、その一方で、肝芽細胞の機能解析ではデータが蓄積しており、また、細胞の分化破綻による組織形成異常や疾患のメカニズム解析にも研究を発展させることができていることから、上皮管腔組織の形成・維持と破綻における組織幹細胞の維持と分化の分子機構の理解に向けておおむね順調に研究が進んでいるといえる。
今後は、引き続き生体内外の解析を通じて多角的に研究を進めながら、他の計画研究や公募研究と協力して研究の発展を目指す。
すべて 2014 2013 その他
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (12件) (うち招待講演 8件) 備考 (1件)
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