研究領域 | 上皮管腔組織の形成・維持と破綻における極性シグナル制御の分子基盤の確立 |
研究課題/領域番号 |
23112002
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
鈴木 淳史 九州大学, 生体防御医学研究所, 教授 (30415195)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 上皮管腔組織 / 幹細胞 / 肝臓 / 発生 / 再生 / 癌 / 細胞分化 |
研究実績の概要 |
本新学術領域の目的は「上皮管腔組織の形成・維持と破綻の分子機構を明らかにする」ことである。上皮管腔組織は「非極性化上皮細胞集団が間質へ肥厚し伸長と分岐を繰り返した後に極性化して管腔構造を構築する形式」と「極性化上皮細胞が内腔を有したまま伸長し分岐する形式」といった二つの異なった形式によって形成されると考えられる。ところが、それら上皮管腔組織を構成する個々の上皮細胞を見てみると、それらの分化・成熟の機序には類似点が多いことがわかる。すなわち、どちらの形式であっても上皮管腔組織が形作られるためには、まず、組織幹細胞から上皮細胞が分化し、それらが機能的かつ形態的に成熟する必要がある。そこで本研究では、二種類の管腔形成における共通の分子基盤と相違を理解するために、管腔組織を形成する上皮細胞の供給源である組織幹細胞に着目し、その維持や上皮細胞への分化決定を制御する分子機構を明らかにする。また、正常もしくは異常な組織幹細胞から分化した上皮細胞をもとに生体外で管腔形成を誘導する方法を開発し、組織幹細胞から三次元の立体構造をもった管腔組織を構築する。本研究では、発生段階の肝臓の組織幹細胞である肝芽細胞に着目して研究を進める。平成26年度では、肝芽細胞の未分化性と分化を制御するシグナル分子やマイクロRNAの役割を明らかにしつつあるだけでなく、三次元再構築モデルによる時空間的な観察と形態計測学的手法による定量的な解析により、肝芽細胞から分化した胆管上皮細胞が肝内胆管を形成する過程を立体的かつ動的に捉えることに成功した。本研究で用いた三次元イメージング技術は、アプローチのしにくい組織内部の立体構造を解析可能なことから、今後、発生学や病理学の分野で広く利用されることにより、組織幹細胞を用いた再生医療の進展や新しい医療技術の開発に貢献することが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの研究では、肝芽細胞の機能解析に加え、肝芽細胞から分化した胆管上皮細胞による肝内胆管形成についても研究が進んでおり、さらに、細胞の分化破綻による組織形成異常や疾患のメカニズム解析にも研究を発展させることができていることから、上皮管腔組織の形成・維持と破綻における組織幹細胞の維持と分化の分子機構の理解に向けておおむね順調に研究が進んでいるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、引き続き生体内外の解析を通じて多角的に研究を進めながら、他の計画研究や公募研究と協力して研究の発展を目指す。
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