研究領域 | 上皮管腔組織の形成・維持と破綻における極性シグナル制御の分子基盤の確立 |
研究課題/領域番号 |
23112006
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
大谷 浩 島根大学, 医学部, 教授 (20160533)
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研究分担者 |
八田 稔久 金沢医科大学, 医学部, 教授 (20238025)
宇田川 潤 滋賀医科大学, 医学部, 教授 (10284027)
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キーワード | ノックアウトマウス / Ror2 / Wnt11 / Wnt5a / 組織学 / 電子顕微鏡 / 胚操作 |
研究概要 |
上皮組織の伸長、分岐、極性化に関する遺伝子のうちRor2,Wnt5aおよびWnt11の遺伝子改変動物を用いて、電子顕微鏡観察や組織定量的手法を含めた詳細な形態学的解析を行った。消化管の内腔の狭小・拡大やヒダ・絨毛の形成、ならびに腎臓の大きさなどの形態異常について解析し、これらの臓器の上皮細胞の細胞周期に同期した核の位置移動(interkinetic nuclear migration: INM)についても解析した。 1)管腔臓器の発生異常の形態学的解析および数理解析 上述の遺伝子のノックアウトマウスについて、消化管、腎臓等の臓器における詳細な形態学的観察を行った。上記動物において、腸管の上皮および間葉によるヒダ・絨毛形成の異常,ネフロン形成遅延など組織構築の異常を、走査電顕、透過電顕、光顕を用いた詳細な野生型との形態学的な比較観察により明らかにした。さらにステレオロジーにより組織定量を行った。これらの所見は、上皮細胞の極性異常ならびに間葉との相互作用の異常を反映すると考えられる。さらに免疫組織観察及び多次元尺度法を用いた解析により腸管および尿管の上皮について、INMが存在する所見を得た(尿管については確認中)。これは新規の知見である。 2)マウス胚操作法および器官培養による実験的解析 子宮内・外発生法等のマウス胚操作法を用いて野生型動物ならびに遺伝子改変動物において着目するシグナル系を撹乱させ、細胞極性、組織構築に与える影響を比較解析するため、予備実験を行った。超音波ガイド下の胎児臓器への正確な注入法を施行した。さらに、注入用ピペットの特殊な加工により、注入部位を確認する新規の方法についても開発を始めた。これらが確立すれば、より精細な実験が可能になる。また、領域内での方法論の共有を推進するため、総括班にて購入された技術訓練用ソフトを用いて、マニュアル作成の試行を始めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画していた遺伝子改変動物の組織形成異常について形態学的に明らかにし、また上皮の細胞周期に同期した挙動についての所見を得て、さらに方法論の改善についても予定通り試行を進めた。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に引き続き、Wntファミリー遺伝子およびその受容体遺伝子の改変動物の上皮管腔組織における発生異常を、肉眼、組織、細胞レベルで詳細に明らかにする。消化管および付属腺の各部、腎臓・尿管を中心に、免疫組織化学、in situ hybridization,組織定量的解析を行う。上皮細胞のINMについては、消化管各部、尿管および他の上皮管腔組織での確認と解析を進める。胚操作についても、注入法の改良について試行を進めると同時に、上記遺伝子改変動物への注入実験を培養実験と並行して行い、これらの遺伝子・分子の組織形成における極性調節に関わる機能の解析を進める。
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