研究領域 | 上皮管腔組織の形成・維持と破綻における極性シグナル制御の分子基盤の確立 |
研究課題/領域番号 |
23112006
|
研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
大谷 浩 島根大学, 医学部, 教授 (20160533)
|
研究分担者 |
八田 稔久 金沢医科大学, 医学部, 教授 (20238025)
宇田川 潤 滋賀医科大学, 医学部, 教授 (10284027)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | ノックアウトマウス / Ror2 / Wnt11 / Wnt5a / 組織学 / 電子顕微鏡 / 胚操作 |
研究実績の概要 |
昨年度に引き続き、上皮管腔組織の伸長・分岐・極性化に関する遺伝子のうち特にRor2, Wnt11の遺伝子改変マウスを用いて、詳細な形態学的解析を行った。これまで範囲を限定して観察していた消化管、腎臓、尿管を、正常との比較において全体像を把握するため、より広範囲にわたって解析を進めた。また、呼吸器系の形態異常についても解析を拡げた。さらに、これらの臓器および脳における上皮細胞の細胞周期に同期した核の位置移動 (interkinetic nuclear migration: INM) についても解析して、正常および異常な形態変化との関係について調べた。 管腔臓器の発生異常の形態学的解析および数理解析については、消化管上皮および筋層、気管支、肺胞等の組織形成異常、尿管系の形成遅延など組織構築の異常を形態学的に観察したのに加えて、野生型の正常な臓器・組織各部における細胞数・分布と比較にして組織定量により厳密に評価を進めた。BrdU免疫組織化学による観察およびその結果の多次元尺度法を用いた解析により、食道を含めた腸管、尿管および気管の上皮について、まずINMの存在を確認し、現在その正常における部位差、日齢差と、さらに遺伝子改変による効果の有無について解析し、、腸管において予備的な結果を得たのでさらに検討を進めている。 子宮外発生法を用いて野生型ならびに遺伝子改変マウスにおいて着目するシグナル系を撹乱させる実験の試行を続け、超音波ガイド下の胎児臓器への正確な注入法の手技・条件をおよそ確立できた。また注入用ピペットの特殊加工により、注入部位を確認する方法もほぼ完成した。領域内での方法論の共有を推進するための技術訓練用ソフトによる供覧用動画を作成し、その概要をマニュアルとして教室ホームページに掲載した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画していた遺伝子改変動物の組織形成異常について、予定通り対象とする臓器・器官系およびその部位を拡大して観察した。また厳密に形態異常を判別するための野生型動物における正常組織の細胞数、分布の基準値の設定もおよそ予定通り進んでいる。また上皮における細胞周期に同期した核移動INMについても、対象臓器・器官系を予定通り増やして比較検討を進めている。方法論の改善についても、予定通り条件設定や公開などの手順を進めることができている。
|
今後の研究の推進方策 |
正常組織の細胞総数など基準値を確立し、それとの比較においてWntファミリー遺伝子およびその受容体遺伝子の改変動物の上皮管腔組織における発生異常を、対象臓器・器官系を拡大して明らかにする。消化管の全長、腎臓・尿管、呼吸器を中心に、さらに比較検討のため神経管・脳にも解析を進める。上皮細胞におけるINMについては、消化管各部、尿管および気管等の上皮管腔組織での部位差、日齢差の解析を進め、一定の結果を得る。胚操作について、改良注入法による野生型および遺伝子改変動物への注入実験を培養実験と並行して行い、これらの遺伝子・分子の組織形成における極性調節に関わる機能の解析を進め、結果を得る。
|