研究領域 | 上皮管腔組織の形成・維持と破綻における極性シグナル制御の分子基盤の確立 |
研究課題/領域番号 |
23112007
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
南 康博 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70229772)
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研究分担者 |
手塚 徹 東京大学, 医科学研究所, 助教 (50312319)
真嶋 隆一 秋田大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (00401365) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 平面細胞極性シグナル / 繊毛シグナル / アダプター分子 / 繊毛関連症候群 / 癌の浸潤転移 |
研究実績の概要 |
本研究では、平面細胞極性(PCP: planar cell polarity)シグナルや繊毛シグナルに焦点を当て、上皮管腔組織形成におけるリガンド、受容体、アダプター等の機能を解明するとともに、これらの分子の発現・機能の異常と繊毛症候群、癌の浸潤転移等の上皮管腔組織の破綻の病態との関連を明らかにすることを目的としている。 本年度の研究により、以下のことが明らかになった。即ち、(1) 腎臓の発生での集合管系の形成において、後腎間葉の限局した領域でのWnt/PCPシグナルの活性化が重要な役割を担うこと、Wnt5aやRor2ノックアウトマウスが重複腎臓・尿管といった先天性腎尿路奇形を呈すること、及び腎臓の器官培養系での解析から、Wnt/PCPシグナルの撹乱により異所性の尿管芽形成や尿管芽の伸長・分岐の異常がもたらされることが見出された(未発表)。(2) 片側尿管結紮による腎線維症モデルの解析から、尿管上皮細胞のEMTに伴いWnt5a-Ror2シグナルが活性化されMMP-2(matrix metalloproteinase-2)が誘導される結果、尿管上皮基底膜が破壊されることやEMTを起こした上皮細胞は間質における活性化線維芽細胞の一部を形成すること、が明らかになった。(3) 遺伝子改変マウスの解析から、Dokファミリーアダプター分子が病的な気道リモデリングや気道過敏性の亢進による気流障害の抑制に必須の役割を担うことが示された。 (4) 一次繊毛形成に重要なIFT20(intraflagellar transport 20)が、骨肉腫細胞においてWnt5a-Ror2シグナルにより誘導され、浸潤突起の形成や浸潤能の亢進に重要な役割を担うことが示された(未発表)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
これまでに、平面細胞極性シグナル因子・アダプター因子の上皮管腔組織破綻における役割について、それぞれ腎臓、肺、特に尿細管上皮や肺・気道上皮の構造・機能に着目し、遺伝子改変マウスの解析、三次元培養・器官培養系での解析を駆使して研究を行い、一連の興味深い成果を挙げ、良好な進捗状況であると考えている。また、腎臓の発生過程における平面細胞極性シグナルの解析では、本領域内公募研究者との連携により強力に研究を推進しており、本領域全体での連携的研究の展開に貢献している。また、炎症や癌の進展等に伴う上皮管腔組織の破綻における上皮間葉転換(EMT: epithelial mesenchymal transition)とこれらのシグナル系の異常との関連についても新たな成果が得られており、当初計画以上に進展していると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
本年度までは、極性化上皮細胞から形成される管腔構造である腎臓、肺、特に尿細管上皮や肺・気道上皮に着目し、上皮管腔組織形成におけるPCPシグナルや繊毛シグナルに関わるリガンド、受容体、アダプター等の機能を解明するとともに、これらの分子の発現・機能の異常と繊毛症候群、炎症や癌の浸潤転移といった上皮管腔組織の破綻の病態との関連を遺伝子改変マウスの解析、三次元培養・器官培養系での解析を駆使して明らかにしてきた。今後これらの研究をさらに発展させるとともに、新たに唾液腺等の非極性化上皮細胞から形成される管腔構造の破綻におけるこれらのシグナル系の機能解析やこれらのシグナル系と他のシグナル系のクロストークについても研究を展開していく計画である。他のシグナル系とのクロストークについては、本領域内の計画研究、公募研究と有機的な連携をはかり、強力に研究を推進したいと考えている。
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