計画研究
これ迄に、Arf6を中心とした細胞内シグナル経路が多くの乳癌の浸潤転移に関与していることを明らかにして来た。この経路において、Arf6はGEP100によって活性化され、活性化したArf6はAMAP1をエフェクターとする。AMAP1はEMTで誘導されるEbl5蛋白質を結合相手とする。したがって、本経路は、正常上皮細胞には存在しない、悪性癌特異的なmesenchymal型シグナル経路である。また、本経路活性化には変異p53が必要である事をその分子的詳細と共に明らかにした。特定のmiRNAの関与や、メバロン酸合成経路の関与も、分子的詳細と共に明らかにし、乳癌における本経路の病理的意義、ゲノム変異や代謝変化を含めた、その成り立ちと活性化機序の大要を明らかにした。今年度は主に、管腔上皮に由来する他の癌へと研究を進めた。具体的には、腎明細胞癌と膵癌に関して研究を進め、両者とも乳癌と類似のArf6経路を発現し、そのことが患者の悪性予後と有意に相関することなどを明らかにした。乳癌とは異なり、腎癌において本経路を活性化するのは、特定のG-protein coupled receptorsであることを発見し、それに関わる分子機構の詳細も明らかにし、論文投稿準備を進めている。膵癌に関しては活性化因子の同定を進めている。乳癌、腎明細胞癌、膵癌の全てにおいて、本Arf6経路は薬剤耐性に深く関与する経路であることも明らかにしており、現在その詳細な分子機序を解析している。乳癌の主たるモデルマウスは10種類程度存在するが、その中でArf6経路を乳癌の浸潤転移に用いているものを同定していたが、その解析を進めている。microRNAを介したc-Srcシグナルに関わる分子及びc-Src自身の発現制御が細胞接着斑形成の破綻を引き起こし、がん悪性化に繋がることを見出していたが、その分子的詳細に関し研究を進めた。
1: 当初の計画以上に進展している
本年度は研究進捗に大きな進展がみられた。上述のように、乳癌における解析の大方を終了し、他の管腔上皮癌へと研究を進めたが、これらも乳癌と同様にArf6経路をそれらの主たる悪性度進展に用いていることを明らかにした。薬剤耐性の根幹であることも明らかにした。本経路を遮断する方法や化合物に関しては、以前に報告しており、今後臨床への展開を準備している。
現在、結果をそれぞれ論文にまとめ、投稿する段階に入ったが、投稿後のreviseにある程度の時間がかかるものを考えている。本Arf6経路と薬剤耐性に関与する分子的詳細を明らかにする。また、Arf6経路を根幹とするモデルマウスを、乳癌と膵癌とにおいて同定しているが、今後、これらを用いて発癌初期段階からの癌化細胞の全身性播種の解析をすすめていく。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (7件) (うち招待講演 1件) 図書 (1件) 備考 (1件)
Sci Rep.
巻: 4 ページ: -
10.1038/srep05094.
http://www.hucc.hokudai.ac.jp/~g21001/