計画研究
1) 乳癌の浸潤転移・薬剤耐性分子機構とその診断・阻害法の発見悪性乳癌の多くにArf6蛋白質とそのシグナル伝達因子AMAP1が高発現しており、浸潤・転移を促がすことを明らかにしていたが、今回、悪性乳癌には本来は間充織細胞に見られるEPB41L5が強く発現し、AMAP1の結合相手となり浸潤転移を促進することを明らかにした。従って、本Arf6経路は、悪性癌特異的な間充織型経路である。さらに、Arf6活性化にメバロン酸経路活性が必須であることを分子的詳細と共に明らかにした。癌抑制遺伝子TP53の変異はメバロン酸経路を活性するが、この発見は、TP53変異がどのように乳癌悪性度進展に関わるのかも明らかにした。また、Arf6-AMAP1-EPB41L5経路が、浸潤転移だけではなく、薬剤耐性の根本であることも明らかとなった。これら成果は、乳癌の再発や予後不良に対する明確なバイオマーカーを呈示し、同時に、その治療法も示したものである。2) 腎明細胞癌の浸潤・転移性並びに薬剤抵抗性の分子基盤の解明脂質メディエーターであるリゾフォスファチジン酸(LPA)が腎明細胞癌の悪性度促進因子であることを詳細な分子機構と共に明らかにした。これまでLPAはRho活性を介して癌悪性度に関与すると考えられてきたが、別の低分子量G蛋白質Arf6も活性化し、癌の浸潤転移、並びに、薬剤抵抗性を促進すること、その際、Arf6が作動させる細胞内シグナル経路はRhoを必要としない、間充織特異的経路であることを明らかにした。病理標本解析から、Arf6経路因子群の高発現は患者予後不良と強い統計的相関を示し、腎明細胞癌の悪性度や薬剤耐性を診断するための優れたバイオマーカーとなることも明らかとなることも示した。腎臓は体液の様々な調節をするが、LPAは体液においても容易に産生される。今回の成果は、腎明細胞癌の悲壮な悪性度進展の主な原因とその対処可能性を明らかにしたものである。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 6件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (17件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件) 図書 (2件) 備考 (1件) 産業財産権 (1件) 学会・シンポジウム開催 (1件)
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