計画研究
本年度は、主に以下の研究結果を得た。(1)細胞老化誘導遺伝子であるp16やp21遺伝子の発現を可視化出来る細胞老化反応可視化マウスと主要なSASP因子であるIL-1またはIL-6の欠損マウスとを交配させ、SASPの誘導を減弱させた細胞老化反応可視化マウスを作成した。これらのマウスを様々な発癌ストレス下で飼育することによりSASPの細胞老化反応と発癌への影響を解析した。その結果、主要なSASP誘導因子であるIL-1を欠損させることで、肝臓における細胞老化の誘導自体には全く影響はなかったが、肥満に伴うSASPの誘導と肝癌の発症率は著しく低下した。しかし、加齢に伴う発癌など、その他の発癌ストレスに対しては殆ど差は見られなかった。一方、IL-6を欠損させても、何も変化は見られなかった。以上の研究結果は、マウスの肝臓においては肥満に伴い肝星細胞が細胞老化及びSASPを起こすことで肝癌の発症が促進され、この場合、IL-1がSASPの誘導に重要な役割を果たしていることを強く示している。(2)薬剤投与によりp16を高発現している細胞を死滅させることができる遺伝子改変マウスに発癌ストレスを含めた様々なストレスを与えた後で、老化細胞を死滅させた場合に見られる変化を調べた。その結果、驚いたことに、老化細胞を死滅させてSASPが起こらないようにすると、傷ついた皮膚の修復が著しく遅くなることが分かった。これらの結果は、SASPは本来、傷ついた組織を修復するのに重要な役割を果たしており、加齢や肥満などによりSASPが過度に働くようになると発癌を引き起こすようになることが明らかとなった。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件、 オープンアクセス 4件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (14件) (うち招待講演 14件)
Cell Cycle
巻: 14 ページ: 1164-1173
doi: 10.1080/15384101.2015.1010866.
Cancer Science
巻: 106 ページ: 244-252.
doi: 10.1111/cas.12600.
Aging Cell
巻: 12337 ページ: 1-9
doi:10.1111/acel.12337.
Nature Communications
巻: 6:7035 ページ: 1-10
doi.10.38/ncomms8035
Cell Reports
巻: 7 ページ: 194-207
doi.org/10.1016/j.celrep.2014.03.006
Molecular Cell
巻: 55 ページ: 73-84
doi.org/10.1016/j.molcel.2014.05.003
Developmental Cell
巻: 31 ページ: 722-733
doi.org/10.1016/j.devcel.2014.11.012