研究領域 | ゲノム・遺伝子相関:新しい遺伝学分野の創成 |
研究課題/領域番号 |
23113002
|
研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
|
研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
高山 誠司 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 教授 (70273836)
|
キーワード | 遺伝学 / 遺伝子 / ゲノム / 植物 / 進化 / エピジェネティクス / 自家不和合性 / 優劣性 |
研究概要 |
1.対立遺伝子間におけるエピジェネティックな優劣性発現制御機構の解明 (1)優劣性発現へのエピジェネティクス関与の普遍性の検証 アブラナ科植物の花粉因子の対立遺伝子間の優劣性が、低分子RNAによりエピジェネティックに制御される例を発見してきた。しかし、同定した低分子RNAで説明される優劣性関係は一部に限られるため、他の対立遺伝子間の優劣性に関わる低分子RNA候補を次世代シーケンサーにより網羅的に探索し、新たな候補を複数同定した。現在、これらの新低分子RNA候補のゲノム上の位置、発現組織の確認、優劣性制御への関与の確認を進めており、本機構が他の優劣性制御にも関わるかどうかを明らかにする予定である。 (2)対立遺伝子特異的発現抑制機構の解明 優性側対立遺伝子に由来する低分子RNAが、劣性側対立遺伝子の発現を抑制する分子機構の詳細は不明である。本分子機構の解明を加速するために、本優劣性現象をシロイヌナズナで再現させることを試みた。低分子RNA産生領域である優性側逆位反復DNA配列と標的の劣性側対立遺伝子を導入した形質転換体では、劣性側対立遺伝子のDNAメチル化や発現抑制は再現されなかった。導入した標的DNA領域が不十分である可能性、低分子RNAの産生制御が植物種により異なる可能性を現在検討している。 2.遺伝子重複を介した非自己対立遺伝子認識機構の解明 (1)ナス科植物Petunia hybridaの花粉因子SLFsの網羅的解析 次世代シーケンサーを用いて葯発現遺伝子を網羅的に解析し、新たなSLFs候補を多数同定することに成功した。今後、不完全長のコンティグに関してはPCR等の手法により完全長cDNAの取得を進め、S遺伝子座上にコードされたSLFs類の網羅的同定を目指す。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
次世代シーケンサーを用いた網羅的解析により、項目1に関わる低分子RNA候補、項目2に関わる花粉因子SLFs候補を計画通り多数同定することに成功した。
|
今後の研究の推進方策 |
低分子RNA候補に関しては、本機構の普遍性解明に向けて優劣性制御への関与を検証すること、花粉因子SLFsに関しては本遺伝子群の進化の道筋の解明に向けて全cDNA配列を取得し進化系統樹を作成すること、が次の目標となる。優劣性制御機構の解明を加速するには、モデル植物のシロイヌナズナで本現象を再現することが必要であり、次年度内での系の確立を目指す。
|