研究領域 | ゲノム・遺伝子相関:新しい遺伝学分野の創成 |
研究課題/領域番号 |
23113002
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
高山 誠司 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 教授 (70273836)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 遺伝学 / 遺伝子 / ゲノム / 植物 / 進化 / エピジェネティクス / 自家不和合性 / 優劣性 |
研究実績の概要 |
植物の自家不和合性遺伝子座の花粉因子および雌ずい因子複対立遺伝子間にみとめられる以下のゲノム遺伝子相関現象の解明を目的としている。 1.対立遺伝子間におけるエピジェネティックな優劣性発現制御機構の解明 アブラナ科植物Brassica rapaの自家不和合性の花粉因子の対立遺伝子間の優劣性に低分子RNAを介した遺伝子発現制御が関わる例を見出してきた。この現象の普遍性を確認するために、他の対立遺伝子間の優劣性関係を精査した結果、関与が期待される新たな低分子RNA候補を複数見出し、それらが優劣性制御の場である葯で発現していることを確認した。さらに、これら低分子RNAをコードするゲノム領域を決定し、形質転換による機能証明実験を進めた。また、この低分子RNAを介した優劣性制御機構の解明に向けて、本優劣性現象を再現させた簡易検出系の作出を進めた。低分子RNAのゲノム領域と、その標的の劣性側プロモーターに連結したマーカー遺伝子を同時にシロイヌナズナに導入したところ、抑制の程度は低いもののマーカー遺伝子の発現抑制が確認された。 2.遺伝子重複を介した非自己対立遺伝子認識機構の解明 ナス科植物Petunia hybridaの自家不和合性において、非自己の雌ずい因子S-RNaseの認識に関わる全花粉因子SLFsを同定するために、花粉で発現する遺伝子の中から次世代シーケンサーを用いてSLFs候補遺伝子を網羅的に探索した。不完全長のコンティグに関してはPCR等の手法により完全長cDNAの取得を進めると共に、連鎖解析によりそれらが自家不和合性遺伝子座上に局在することの証明を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.対立遺伝子間におけるエピジェネティックな優劣性発現制御機構の解明 エピジェネティックな優劣性制御機構の普遍性の証明を第一の目的としてきたが、アブラナ科植物Brassica rapaにおいては解析した多くの優劣性組み合わせにおいて関与すると予測される低分子RNAを見出すことに成功した。また、この優劣性制御機構を解明するための簡易検出系のプロトタイプを作出することに成功した。 2.遺伝子重複を介した非自己対立遺伝子認識機構の解明 次世代シーケンサーを駆使した網羅的解析により、非自己雌ずい因子の認識に関わる花粉因子群の塩基配列をほぼ解明することに成功した。
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今後の研究の推進方策 |
1.対立遺伝子間におけるエピジェネティックな優劣性発現制御機構の解明 形質転換実験により、同定した低分子RNAと優劣性制御の関係を実証すると共に、他の植物の自家不和合性対立遺伝子間の優劣性にも類似の機構が普遍的に機能しているかどうかを明らかにする。また、優劣性制御機構解明のための簡易検出系の改良を進め、制御に関わる因子類を明らかにしていく。 2.遺伝子重複を介した非自己対立遺伝子認識機構の解明 同定したSLFsの塩基配列を精査し、必要に応じて機能解析やゲノム配列解析を加えることで、これらの非自己認識システムが進化してきた道筋を解明していく。
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