計画研究
以下2項目のゲノム遺伝子相関現象の解明を目的として研究を行った。1.対立遺伝子間におけるエピジェネティックな優劣性発現制御機構の解明アブラナ科植物Brassica rapaにおいて新たに見出された低分子RNAの一分子種Smi2が、class-IIに属するSハプロタイプ間の直線的な優劣性(S44 > S60 > S40 > S29)を決定する因子である可能性が強く示唆された。優性側Sハプロタイプより作られるSmi2は、いずれも劣性側SハプロタイプのSP11プロモーター領域と高い相同性を示し、当該遺伝子のDNAメチル化、サイレンシングを誘導しているものと予測された。また、最劣性のS29ハプロタイプでは、塩基置換によりSmi2が前駆体から切り出されておらず、それが他のSハプロタイプのサイレンシングを誘導しない理由である可能性が示唆された。2.遺伝子重複を介した非自己対立遺伝子認識機構の解明花粉トランスクリプトーム解析より、ナス科植物Petunia hybridaの各Sハプロタイプは16-20の花粉因子SLFsを持ち、それらは18種類のタイプに分類されることが判明した。また、SLFsの配列上にはSハプロタイプ間で多数の組換えが検出され、進化の過程でgene conversion等によりSLFsの受け渡しが行われてきたことが示唆された。また、このgene conversionを介したSLFsの受け渡しが、自家和合性株への自然変異にも寄与していることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
1.対立遺伝子間におけるエピジェネティックな優劣性発現制御機構の解明アブラナ科植物B. rapaの自家不和合性花粉因子の対立遺伝子間に認められる複雑な優劣性関係を説明しうる低分子RNAを発見することに成功した。実験的証明を目指して進めている形質転換実験も順調に進んでおり、本機構の優劣性への普遍的関与を証明できるものと期待している。2.遺伝子重複を介した非自己対立遺伝子認識機構の解明ナス科植物の自家不和合性の非自己認識に関与する花粉因子を網羅的に同定すると共に、これら多数の花粉因子が生み出されてくる過程で、遺伝子重複に加え、自家不和合性遺伝子座では起きないと考えられていたgene conversionが起きているという新たな発見をし、世界に先駆けて報告することができた。
1.対立遺伝子間におけるエピジェネティックな優劣性発現制御機構の証明新たに見出した低分子RNA(Smi2)について、自家不和合性花粉因子の対立遺伝子間の複雑な直線的優劣性を決定する因子であることを形質転換実験等により証明し報告する。また、雌ずい因子の対立遺伝子間の優劣性の機構にも類似の機構が関与している可能性を検証する。また、低分子RNAが劣性側対立遺伝子の発現を強力に抑制する分子機構についても解明を進める。2.遺伝子重複を介した非自己対立遺伝子認識機構の解明花粉因子遺伝子周辺の塩基配列を複数のSハプロタイプ間で比較解析し、非自己認識系が進化してきた道筋について最新の分子モデルを提唱する。自己認識系と非自己認識系の進化過程における相違点を考察する。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 謝辞記載あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件) 備考 (2件)
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