研究領域 | ゲノム・遺伝子相関:新しい遺伝学分野の創成 |
研究課題/領域番号 |
23113003
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
木下 哲 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 研究チーム長 (60342630)
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研究分担者 |
河邊 昭 京都産業大学, 総合生命科学部, 准教授 (10582405)
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キーワード | イネ / 生殖隔離 / 胚乳 / 野生イネ / エピジェネティクス |
研究概要 |
種間交雑における胚乳の生殖隔離機構へのポリコーム複合体の関与 ポリコーム複合体は進化的に保存されたヒストンメチル化活性を持つ複合体である。これまでの我々の種間交雑の解析から、ポリコーム複合体が中心的役割を果たすと考える結果が得られている。一つは、種間交雑を行った時に見られる胚乳発生の異時性、もう一つは標的遺伝子と考えるOsMADS87の発現の過剰抑制と脱抑制である(Ishikawa&Ohnishi et al.Plant J. 2011)。そこで、ポリコーム複合体の構成因子の中でも、インプリントされた発現を示すOsFIE1に着目し、日本晴、O.longistaminata, O. punctata, O, australiensisから同遺伝子をクローニングし配列を比較した。また、O.longistaminata, O. punctataからクローニングしたゲノム断片を用いて日本晴を形質転換し、OsFIE1がどの程度生殖隔離に貢献しているか寄与率を見積もる実験の準備を進めた。 倍数体間交雑における軋轢因子の検証 同一種内の倍数体間交雑においても、種間交雑と同じように胚乳発生の亢進と抑制がみられる。従って、種間交雑と倍数体間交雑では共通した分子機構が想定されている (Review in Kinoshita Genes & Genet. Syst. 2007)。しかしながら、ゲノムの異なる種間交雑と、ゲノムは同一で細胞質やゲノムの量が異なる倍数体間交雑では、基本的には軋轢を引き起こすトリガーは異なると考えられる。どこまでが違いどこから同じ分子機構を用いているのか、O.sativaの2倍体種と4倍体種の組み合わせを用いて検証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に従って、ポリコーム複合体の種間交雑での機能に着目し、中でもインプリントされた発現を示すOsFIE1に着目した。多くの野生種と栽培種からOsFIE1の配列情報を取得し、コントロールとしてインプリントされていないOsFIE2の配列情報を取得した。また、野生種由来のOsFIE1を導入した形質転換体の作成も順調に進めることが出来ている。さらに、倍数体間交雑も順調に掛け合わせとサンプリングと解析を進めることが出来ており、概ね研究計画は順調に進められている。一方、胚乳組織におけるポリコーム複合体の標的遺伝子のヒストン修飾を調べるためには、クロマチン免疫沈降法が必須となるが、未だ方法論の研究室内での確立に着手できていない。
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今後の研究の推進方策 |
取得したOsFIE1の配列の比較を分子進化の観点から詳細に解析する。また、必要に応じてさらなる配列の取得をする。O. longistaminata, O. punctata由来のOsFIE1を導入した形質転換日本晴に対して、それぞれの野生イネとの生殖隔離がどの程度打破されたかに関して解析を行う。通常は、胚乳の生殖隔離が原因で種子発生に異常を生じ、発芽率が著しく悪く、かつ著しく軽い種子が着粒する。従って、実験では、まず、形質転換イネと野生イネを交配し、組織切片作成により胚乳発生を観察すること、最終的な種子の重量を測定することを計画している。 倍数体間交雑に関しては、サンプリングされた倍数体間交雑後の種子に対して、詳細な組織切片解析を行い、種間交雑のそれと比較する。また、多くの植物種では種間の生殖隔離が明瞭に存在する組み合わせでも、片方の親の倍数性を変えることで、生殖隔離が可能である例が報告されている。イネにおいても同様の現象が観察できるか検証し、胚乳発生に関して、種間交雑、倍数体間交雑それぞれに関して比較検証する。
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