ジベレリン(GA)は陸上植物の進化の過程で、共通な受容・伝達システムを保持しながら、コケ・シダ・被子植物において、雄性器官の運命決定・発達、茎葉伸長、種子発芽など、様々な生命現象に関与するようになった。これは、GA合成と受容関連遺伝子の重複・機能の多様化が原因と予想される。本研究は、進化の諸段階で様々な機能の分化に成功したGA化合物と受容システムを解析し、ゲノム・遺伝子相関の一つのモデルケースを提供することを目的とする。 1.コケはGA分子やGA受容体は持たないが、GA信号伝達因子であるGAMYB及びそれ以降の信号伝達が存在し、造精器形成に関わることが確認されている。そこで、コケGAMYBがどのような遺伝子群を介して造精器形成を誘導するかを明らかにし、コケの造精器形成過程と被子植物の花粉形成過程の相同(相違)性を検討した。その結果、コケGAMYBは被子植物の花粉形成過程におけるGAMYBの機能の少なくとも一部を代替できることが明らかになった。 2.シダはGA分子や受容体を有するが、個体の生長には関与しない。一方、シダもコケ同様、GA及びその誘導体・アンセリジオーゲンは生殖器官や造精器の誘導・発達に関与する。そこで、遺伝子の発現解析により、シダにおける造精器の誘導・発達に関与する遺伝子を抽出しその機能を検討した。その結果、シダにおける造精器の誘導・発達過程において、GA生合成酵素遺伝子の誘導が行われることが明らかになった。 3.一部双子葉植物にのみ存在する高感受性GA受容体について、感受性が高くなった機構を調べるとともに、花粉形成や生長過程における機能を変異体や形質転換体の解析を行った。その結果、アブラナやマメ科の一部の植物において存在する高感受性GA受容体は根に選択的に発現し、その伸長に関わっていることが示唆された。
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