計画研究
日本海イトヨと太平洋イトヨの間の雑種不妊の研究に関しては、候補遺伝子のさらなる細胞学的、および、生化学的解析を実施した。候補遺伝子のGFP融合タンパク質を培養細胞に発現させて局在を解析した結果、日本海イトヨのタンパクと太平洋イトヨのタンパクの局在が異なっていることを見いだした。また、試験管内でのヒストン結合アッセイの結果、太平洋のタンパクはヘテロクロマチンに特徴のある修飾ヒストンに結合する傾向が見られたが、日本海のそれでは見られなかった。さらに、アミノ酸の置換を入れたキメラ分子の解析によって、1アミノ酸の置換で結合様式が大きく変化することを見いだした。また、CRISPR/cas9システムを利用して効率よく遺伝子破壊する系の立ち上げに成功した。さらに、日本海型のY染色体を日本海イトヨに戻し交配した個体を利用することによって、日本海型のX染色体と不適合を引き起こす太平洋のゲノム領域として太平洋型のY染色体が有力であることを明らかになった。これは、XとYの間の不適合が雑種不妊の原因であることを示唆する。性染色体の進化が雑種不妊や種分化に重要であることから、脊椎動物について性染色体のデータベースを構築した。さらに、このデータベースより性染色体転換のパターンについて解析した。具体的には、魚類とは虫類で染色体と常染色体の融合のパターンを網羅的に解析し系統補正を行って解析した結果、染色体の融合はY染色体で起こりやすく、他の性染色体(X,Z,W)よりも有為に融合確立が高いことが明らかになった。さらに、理論解析と個体ベースシミュレーションを行うことによって、染色体融合の原因として、ほぼ中立説とオス駆動仮説を仮定することで、Y染色体の融合率が高い原因を説明できることを明らかにし論文として報告した。
2: おおむね順調に進展している
既に候補遺伝子の同定が完了し、詳細な分子生物学的機能解析の段階に入っているから。また、遺伝子操作イトヨの作出も着実に進行している。さらに、数報の論文を既に一流学術誌に責任著者として報告しており、実績もあげているから。
雑種不妊の候補遺伝子がコードするタンパク質が局在している染色体領域をChip-Seqを利用して明らかにする。具体的には、日本海イトヨのタンパクと太平洋イトヨのタンパクのGFP融合タンパクを細胞に発現させ、抗GFP抗体でChipし、miseqで解析する。また、候補遺伝子についてCRISPR/cas9システムを利用して遺伝子破壊した個体を作出し、精巣の表現型を解析する。また、CRISPR/cas9システムを利用して遺伝子置換を行い、太平洋イトヨの候補遺伝子を日本海型に置換して精巣を解析する。さらに、トミヨ属の性染色体システムについて解析を完了させ、論文化する。
すべて 2015 2014 その他
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 6件) 学会発表 (3件) 図書 (1件) 備考 (4件)
Molecular Biology and Evolution
巻: in press ページ: in press
Scientific Data
巻: 1 ページ: 140015
10.1038/sdata.2014.15
General and Comparative Endocrinology
巻: 205 ページ: 197-206
10.1016/j.ygcen.2014.06.017
Zoological Science
巻: 31 ページ: 703-708
10.2108/zs140102
Molecular Ecology
巻: 23 ページ: 5258-5275
10.1111/mec.12933
PLoS One
巻: 9 ページ: e112404
10.1371/journal.pone.0112404
http://www.nig.ac.jp/Research-Highlights/1468/1568.html
http://www.nig.ac.jp/Research-Highlights/1468/1541.html
http://www.ige.tohoku.ac.jp/prg/genetics/study_report/2014/07/plos-biology.html
http://www.ige.tohoku.ac.jp/prg/genetics/study_report/2014/09/molecular-ecology-1.html