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2014 年度 実績報告書

異種トゲウオ間のゲノム不適合と生殖隔離の分子機構

計画研究

研究領域ゲノム・遺伝子相関:新しい遺伝学分野の創成
研究課題/領域番号 23113007
研究機関国立遺伝学研究所

研究代表者

北野 潤  国立遺伝学研究所, 新分野創造センター, 特任准教授 (80346105)

研究期間 (年度) 2011-04-01 – 2016-03-31
キーワード種分化 / トゲウオ / 雑種異常 / 性染色体
研究実績の概要

日本海イトヨと太平洋イトヨの間の雑種不妊の研究に関しては、候補遺伝子のさらなる細胞学的、および、生化学的解析を実施した。候補遺伝子のGFP融合タンパク質を培養細胞に発現させて局在を解析した結果、日本海イトヨのタンパクと太平洋イトヨのタンパクの局在が異なっていることを見いだした。また、試験管内でのヒストン結合アッセイの結果、太平洋のタンパクはヘテロクロマチンに特徴のある修飾ヒストンに結合する傾向が見られたが、日本海のそれでは見られなかった。さらに、アミノ酸の置換を入れたキメラ分子の解析によって、1アミノ酸の置換で結合様式が大きく変化することを見いだした。また、CRISPR/cas9システムを利用して効率よく遺伝子破壊する系の立ち上げに成功した。さらに、日本海型のY染色体を日本海イトヨに戻し交配した個体を利用することによって、日本海型のX染色体と不適合を引き起こす太平洋のゲノム領域として太平洋型のY染色体が有力であることを明らかになった。これは、XとYの間の不適合が雑種不妊の原因であることを示唆する。
性染色体の進化が雑種不妊や種分化に重要であることから、脊椎動物について性染色体のデータベースを構築した。さらに、このデータベースより性染色体転換のパターンについて解析した。具体的には、魚類とは虫類で染色体と常染色体の融合のパターンを網羅的に解析し系統補正を行って解析した結果、染色体の融合はY染色体で起こりやすく、他の性染色体(X,Z,W)よりも有為に融合確立が高いことが明らかになった。さらに、理論解析と個体ベースシミュレーションを行うことによって、染色体融合の原因として、ほぼ中立説とオス駆動仮説を仮定することで、Y染色体の融合率が高い原因を説明できることを明らかにし論文として報告した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

既に候補遺伝子の同定が完了し、詳細な分子生物学的機能解析の段階に入っているから。また、遺伝子操作イトヨの作出も着実に進行している。さらに、数報の論文を既に一流学術誌に責任著者として報告しており、実績もあげているから。

今後の研究の推進方策

雑種不妊の候補遺伝子がコードするタンパク質が局在している染色体領域をChip-Seqを利用して明らかにする。具体的には、日本海イトヨのタンパクと太平洋イトヨのタンパクのGFP融合タンパクを細胞に発現させ、抗GFP抗体でChipし、miseqで解析する。また、候補遺伝子についてCRISPR/cas9システムを利用して遺伝子破壊した個体を作出し、精巣の表現型を解析する。また、CRISPR/cas9システムを利用して遺伝子置換を行い、太平洋イトヨの候補遺伝子を日本海型に置換して精巣を解析する。さらに、トミヨ属の性染色体システムについて解析を完了させ、論文化する。

  • 研究成果

    (14件)

すべて 2015 2014 その他

すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 6件) 学会発表 (3件) 図書 (1件) 備考 (4件)

  • [雑誌論文] Purifying selection maintains dosage-sensitive genes during degeneration of the threespine stickleback Y chromosome.2015

    • 著者名/発表者名
      White, M. A., Kitano, J., and Peichel, C. L.
    • 雑誌名

      Molecular Biology and Evolution

      巻: in press ページ: in press

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Tree of Sex: A database of sexual systems.2014

    • 著者名/発表者名
      Ashman, T. L., Bachtrog, D., Blackmon, H., Goldberg, E., Hahn, M., Kirkpatrick, M., Kitano, J., Mank, J., Mayrose, I., Ming, R., Otto, S. P., Peichel, C. L., Pennell, M. W., Perrin, N., Ross, L., Valenzuela, N., and Vamosi, J. C.
    • 雑誌名

      Scientific Data

      巻: 1 ページ: 140015

    • DOI

      10.1038/sdata.2014.15

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Relaxin-related gene expression differs between anadromous and stream-resident stickleback (Gasterosteus aculeatus) following seawater transfer.2014

    • 著者名/発表者名
      Kusakabe, M., Ishikawa, A., and Kitano, J.
    • 雑誌名

      General and Comparative Endocrinology

      巻: 205 ページ: 197-206

    • DOI

      10.1016/j.ygcen.2014.06.017

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Female mate preference for longer fins in medaka.2014

    • 著者名/発表者名
      Fujimoto, S., Kawajiri, M., Kitano, J., and Yamahira, K.
    • 雑誌名

      Zoological Science

      巻: 31 ページ: 703-708

    • DOI

      10.2108/zs140102

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Ontogenetic stage-specific quantitative trait loci contribute to divergence in developmental trajectories of sexually dimorphic fins between medaka populations2014

    • 著者名/発表者名
      Kawajiri, M., Yoshida, K., Fujimoto, S., Mokodongan, D., Ravinet, M., Kirkpatrick, M., Yamahira, K., and Kitano, J.
    • 雑誌名

      Molecular Ecology

      巻: 23 ページ: 5258-5275

    • DOI

      10.1111/mec.12933

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Comparative analysis of Japanese three-spined stickleback clades reveals the Pacific Ocean lineage has adapted to freshwater environments while the Japan Sea lineage has not.2014

    • 著者名/発表者名
      Ravinet, M., Takeuchi, N., Kume, M., Mori, S., and Kitano, J.
    • 雑誌名

      PLoS One

      巻: 9 ページ: e112404

    • DOI

      10.1371/journal.pone.0112404

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [学会発表] 性染色体進化がトゲウオ適応放散に果たす役割2014

    • 著者名/発表者名
      北野潤
    • 学会等名
      日本分子生物学会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜(横浜市)
    • 年月日
      2014-11-25 – 2014-11-27
  • [学会発表] 野外魚類の遺伝学は何を目指す?2014

    • 著者名/発表者名
      北野潤
    • 学会等名
      日本魚類学会
    • 発表場所
      生命の星・地球博物館(小田原市)
    • 年月日
      2014-11-14 – 2014-11-17
  • [学会発表] 繁殖システムの多様性の概観と趣旨説明2014

    • 著者名/発表者名
      北野潤
    • 学会等名
      日本動物学会
    • 発表場所
      東北大学(仙台市)
    • 年月日
      2014-09-11 – 2014-09-13
  • [図書] 遺伝子が語る生命38億年の謎2014

    • 著者名/発表者名
      高野敏行・角谷徹仁・清水裕・嶋本伸雄・北野潤・斎藤成也・高橋文・隅山健太・荒木弘之・伊藤啓・小出剛・小林武彦・深川竜郎・前島一博・木村暁・榎本和生・岩里啄治・相賀裕美子・酒井則良
    • 総ページ数
      9(48~56)
    • 出版者
      悠書館
  • [備考] 日本メダカ雌雄差の地理的変異の遺伝基盤

    • URL

      http://www.nig.ac.jp/Research-Highlights/1468/1568.html

  • [備考] 動植物の性決定システムは実に多様

    • URL

      http://www.nig.ac.jp/Research-Highlights/1468/1541.html

  • [備考] 動植物の性決定システムの多様性の総説がPLOS Biologyに掲載

    • URL

      http://www.ige.tohoku.ac.jp/prg/genetics/study_report/2014/07/plos-biology.html

  • [備考] 研究成果がMolecular Ecologyに掲載されました

    • URL

      http://www.ige.tohoku.ac.jp/prg/genetics/study_report/2014/09/molecular-ecology-1.html

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公開日: 2016-06-01  

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