計画研究
宿主-病原菌間の相互作用は、強力であり(Haldane 1949)、性の進化を含めた生物進化の原動力の一つと言われている。こうした相互作用は、関連遺伝子およびその周辺のゲノムのDNA配列上に特徴的な痕跡を残す。本課題では、全ゲノム解析による植物とその病原菌、寄生者の共進化で生じる強い自然選択がゲノムに残した痕跡を同定して、選択の働いた遺伝子を見いだし、その機能を解明することに焦点を当てる。そのために、(1)植物-病原菌、寄生者相互作用のゲノム解析およびエフェクターの同定、(2)全ゲノム解析によるselective sweep検出技術の開発と利用、の2つの研究を実施する。平成26年度の研究実績は以下の通り。(1) 植物-病原菌、寄生者相互作用のゲノム解析およびエフェクターの同定いもち病菌から分泌されるエフェクターAVR-Pik、AVR-Pia、AVR-Piiの機能解明を進めた。AVR-Pikが、イネsHMAタンパク質と結合し、活性酸素種発生を制御している可能性があることが明らかになった。HMAドメインはイネ抵抗性タンパク質Pikにも存在し、このドメインとAVR-Pikがと直接結合することにより抵抗性が誘導される事が明らかになった。AVR-Piaを認識する抵抗性タンパク質Piaを構成するNB-LRR型タンパク質RGA4とRGA5の機能が明らかになった。イネPii抵抗性タンパク質によるAVR-Piiの認識には、イネExo70タンパク質が必要であることが明らかになった。(2) 全ゲノム解析によるselective sweep検出技術の開発と利用イネ交配後の分離集団を利用して、MutMap法やQTL-seq法を活用して重要遺伝子領域を多数同定した。
2: おおむね順調に進展している
所期の研究に従い、着実に研究を進めている。成果の論文公表も順調に進んでいる。
1. いもち病菌エフェクターAVR-Pia、AVR-Piiのイネ標的因子の同定と相互作用の解明。2. 野生植物オニドコロを材料として、全ゲノム解析および集団ゲノム解析を実施し、自然選択の働いたゲノム領域を同定する。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 5件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件)
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