計画研究
リボソームRNA遺伝子(rDNA)は、染色体上に同一配列が100コピー以上繰り返して存在する巨大反復配列である。そのためrDNAは最大の脆弱部位となり、その安定性が染色体全体の安定性に影響を与え、細胞老化やDNAダメージ耐性の低下を引き起こす。またリボソームRNA遺伝子間の非コード領域中には、染色体の安定性の制御に関わる配列が集中して存在し、それらインターメアの機能を研究する上で絶好のモデル領域である。昨年までにrDNAの安定性が細胞老化の直接原因となっていること、またrDNAの不安定性を引き起こす遺伝子を同定している。本年度は以下の3点を中心に解析を行った。<rDNAから発せられる老化シグナルの解析> rDNAが不安定で有るにも関わらず寿命が短くならない変異株を探索したところ、3つの変異株が取れてきた。興味深いことにこれらの遺伝子産物(Dpb4、Dpb3、Mrc1)はすべてDNA合成酵素イプシロンに関係する。DNA合成酵素イプシロンはリーディング鎖を合成することから、その異常が老化シグナルに関わる可能性が示唆される。<rDNA不安定化変異株の解析> ctf4変異株ではrDNAが不安定でかつコピー数が異常増加している。ctf4変異株の組換え中間体の解析から、野生株では存在しない小さなDNA分子を単離することに成功した。この分子の正体が判明すればCtf4のrDNAの安定性維持の機能が判明する可能性がある。<動物細胞のrDNAにおけるメチル化の影響> 動物細胞のrDNAには、転写が起こっているコピーと起こっていないコピーが共存する。rDNAのメチル化の有無と転写、複製阻害活性との関係を調べたところ、メチル化されて転写が起こっていないコピーでは、複製阻害タンパク質TTF1による複製阻害が見られないことが判明した。つまりrDNAの転写と複製阻害はエピジェネティックな制御を受けており、協調して転写と複製の衝突を回避していることが判った。
2: おおむね順調に進展している
計画していた実験をほぼ予定通りに行い、想定内の結果を得ることができた。さらにctf4変異体の組換え中間体の解析で発見された小さなDNA断片は、Ctf4の機能に加え組換え修復のプロセスを知る上で重要なヒントとなる可能性があり、期待が持てる。
今までのところ特段の問題もなく順調に進んでいる。老化シグナルの解析では、リーディング鎖を合成するDNA合成酵素イプシロンがどのように関わっているのか、その分子メカニズムの解明が重要な鍵となる。常法通りDNA合成酵素イプシロンの変異株の複製阻害、DNA2本鎖切断効率や非コードの転写に与える影響を調べていく。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 4件、 招待講演 6件) 図書 (1件) 備考 (3件) 学会・シンポジウム開催 (1件)
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