研究領域 | ゲノムを支える非コードDNA領域の機能 |
研究課題/領域番号 |
23114003
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
太田 邦史 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (90211789)
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研究分担者 |
加藤 由起 東京大学, 分子生物学研究所, 助教 (50391917)
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キーワード | ゲノム / クロマチン / エピゲノム / ncDNA / 組換え / 遺伝情報 / 減数分裂 |
研究概要 |
1)非コードDNA配列とクロマチンを介したゲノム動態制御:酵母の減数分裂期組換えホットスポット等の非コードDNA配列をデータベース化する作業を開始した。また、非コード機能配列を抽出する配列解析ツール等の開発に着手し、一部ホモ/ヘテロ判定ツールが有効に機能することを見出している。また、減数分裂期の分裂酵母を用い、種々の修飾ヒストンに対する修飾残基特異的抗ヒストン抗体を用いてクロマチン免疫沈降を行った。その結果、特徴的なヒストン修飾パターンを見出したので、ゲノム全体で一般性があることを実証した(論文リバイス中)。加藤は次世代シーケンサーを用いたChIPSeq条件の最適化を行った。 組換え開始因子や調節因子の分子複合体の形成を、免疫沈降・微量質量分析などで解析し、それらの因子の結合部位を非コード機能配列や染色体高次構造(軸-ループ結合など)と関連づけ、Mde2が軸-ループ構造を連結する機能を有することを発見した(論文リバイス中)。 2)新規「大規模ゲノム再編系」による構成的解析:S288C系統出芽酵母と、これと比して0.7%の塩基配列多型を持つSK1系統の半数体を掛け合わせてヘテロ2倍体とし、これに耐熱性4塩基認識制限酵素であるTaql発現系を導入した。体細胞分裂時に、パルス的高温処理で一過的なゲノム切断を誘発し、ゲノムの大規模再編成を活性化することに成功した。TaqI活性化後に特徴的な表現型を示すクローンを単離し、そのゲノムDNAをゲノムタイリングDNAチップにハイブリダイズして解析し、SK1ゲノム配列とS288Cゲノム配列の入れ替わる切断点の位置情報を多数集積した。その結果、一例として切断点近傍に非コードDNA機能配列の一つであるトランスポゾン配列Tyを見出した。次世代シーケンサーを用いた大規模ゲノム再編成の解析方法を確立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
組換えホットスポットに特徴的なヒストン修飾パターンを見出し、その一般性の検証まで実現できた。現在論文リバイス中である。また、大規模ゲノム再編成のゲノムワイド解析手法を前倒しで開発し、トランスポゾンの役割や、多数の遺伝子変換の発生の確認など、予想以上のデータが蓄積されている。さらに、分裂酵母のMde2という因子が染色体軸・ループ構造を連結することを見出し他(論文リバイス中)。
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今後の研究の推進方策 |
従来予定していたシーケンシャルChIPおよび、長大遺伝子領域の非コードRNA転写などの解析を行う。大規模ゲノム再編系に関しては他の生物種についての実施例を入手していく。また、前年度に得られたMde2やヒストン修飾に関する新知見をさらに発展させていく予定である。非コードDNAの解析ツール開発については、印南班らとともに推進する。他の班員の試料を次世代シーケンサーで解析し、共同研究の推進も行う。
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