計画研究
近年の個別ゲノム研究から、動的に再編成を受けるゲノムDNAの姿が示されつつある。DNA再編成は、非コードDNA領域を介して複層的に制御されていることが示されている。本研究では、ゲノム再編成の中核を担うインターメア(非コード機能配列)要素として、組換えホットスポットや長大遺伝子間領域、反復配列や偽遺伝子に注目し、機能性DNA配列の種間比較による同定と、それらに特徴的なクロマチン修飾やトランス因子の同定を行う。また、非コードDNA領域のRNA転写や染色体高次構造の機能の解明、独自に開発したゲノム再編成系を用いた人為的ゲノム再編による構成的解析を行う。今年度は、印南・中山・小林班とともに分裂酵母32株ゲノム配列を決定後、比較ゲノム解析を実施し (Fawcett et al., 2014)、分裂酵母ゲノムの変化しやすい領域としにくい領域を同定した。また、印南班と共同で減数分裂期の組換えホットスポットと、減数分裂期の染色体軸部位・接着部位との関係を明らかにした。さらに、酵母ホットスポットに見られる特徴的配列について、印南らと解析を実施した。組換えホットスポットのヒストン修飾に関わるエピゲノム因子(酵母Gcn5・Set1やマウスPrdm9など)の変異体解析を行い、これらの組換え開始制御における役割を検証した。出芽酵母において減数分裂期染色体の軸ループ相互作用形成に関わる因子の探索を行い、転写メディエーターの関与を示唆する証拠を得た。鳥類抗体遺伝子座のDNA再編成にDNA脱メチル化因子が関与するデータを得た。さらに、配列多型の違いを有する2系統の酵母のハイブリッドに対し、大規模ゲノム再編成を誘発し、染色体再編成部位を次世代シークエンサーなどにより解析した。その結果、染色体再編の切断点周辺にレトロトランスポゾンが見いだされる事例を観察した。
2: おおむね順調に進展している
次世代シークエンサーを用いたChiP-seq 実験の一部を次年度に繰り越したが、それ以外はほぼ予定通り進捗した。とくに他班との共同研究が複数立ち上がり、次年度以降に具体的な成果として結実することが期待される。共同研究成果に関しても共著論文の発表が行われており、一部では予想以上の成果が得られている。また、非コードDNA配列要素については、クロマチン修飾をストレスに応じて制御し、転写や組換えを活性化する配列の役割が示されたほか、テロメア様反復配列やサブテロメア配列など、他班との共同研究の過程でその実態が明らかになってきた。
H27年度は最終年度ということもあり、これまでの研究を取りまとめ、論文等での発表を積極的に行う予定である。実験では、分裂酵母のストレス遺伝子の上流などに多く見られる長大遺伝子間領域の機能に注目する。特にこの領域から合成される非コードRNA転写が、下流のストレス遺伝子の発現調節にどのような働きをしているかについて解析を行う。また、ストレス遺伝子座で合成されるアンチセンス鎖RNAの転写の意義についても検討を行う。組換えホットスポットの研究では、出芽酵母の組換えホットスポットの活性化に関わると考えられる転写メディエーターの働きを、各種変異体解析やSpo11オリゴ解析などを組み合わせて明らかにしていく。また、鳥類遺伝子の抗体再編成に関わるDNA脱メチル化酵素の機能については、遺伝子破壊株を作製してその表現系を調べる。
すべて 2015 2014 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (11件) (うち国際共著 5件、 査読あり 11件、 オープンアクセス 11件、 謝辞記載あり 4件) 学会発表 (17件) (うち国際学会 10件、 招待講演 4件)
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