研究実績の概要 |
DNA再編成は、非コードDNA領域を介して複層的に制御されていることが示されている。本研究では、ゲノム再編成の中核を担うインターメア要素として、組換えホットスポットや長大遺伝子間領域、反復配列や偽遺伝子に注目し、機能性DNA配列の種間比較による同定と、それらに特徴的なクロマチン修飾やトランス因子の同定を行った。また、非コードDNA領域のRNA転写や染色体高次構造の機能の解明、独自に開発したゲノム再編成系を用いた人為的ゲノム再編による構成的解析を行った。 今年度は最終年度ということもあり、これまでの研究を取りまとめ、論文等での発表を積極的に進めた。まず、分裂酵母のストレス遺伝子の上流などに多く見られる長大遺伝子間領域から合成される非コードRNA転写が、下流のストレス遺伝子の発現に正のフィードバック制御をかける機構を解明した(Takemata et al, 2016)。まら、ストレス遺伝子座で合成されるアンチセンス鎖RNAの転写を見いだし(Oda et al, 2015)、この転写によりストレス解除時に急速にmRNAの消失が誘発される機構を明らかにした。出芽酵母の組換えホットスポットの活性化に関わると考えられる転写メディエーターの働きを、ChIP-seq実験などで解析し、これらが副次的に関与する可能性を見いだした。また、鳥類遺伝子の抗体再編成に関わるDNA脱メチル化酵素の機能については遺伝子破壊株を作製し、その関与を明らかにした。さらに、抗体遺伝子再編成により新規神経ガイダンス物質である脂質に対する中和抗体を作製し、その機能を明らかにした(Guy et al, 2015)。加納班と協力してサブテロメアとシュゴシンの結合により、遺伝子発現や複製タイミングが制御されていることを見いだした(Tashiro et al, 2016)。他班との共同研究が具体的に結実してきた。
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