研究領域 | ゲノムを支える非コードDNA領域の機能 |
研究課題/領域番号 |
23114005
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
中山 潤一 名古屋市立大学, 大学院システム自然科学研究科, 准教授 (60373338)
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研究分担者 |
須賀 則之 明星大学, 理工学部, 准教授 (00396219)
有吉 眞理子 京都大学, 物質ー細胞統合システム拠点, 特任准教授 (80437243)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 非コードDNA / 染色体 / ヘテロクロマチン / HP1 |
研究実績の概要 |
【1】非コードDNAによるヘテロクロマチン化の解析(担当:中山):非コードDNA領域の動態とヘテロクロマチン因子の関連を調べるため、分裂酵母のヘテロクロマチン因子がrDNAの動態をどのように制御しているのか検討を行った。その結果、DNA複製や組換えに関わる因子ばかりで無く、Clr4/Suv39h1やSwi6/HP1の欠損、あるいはRNAi因子の欠損によってrDNAのリピート数が変動する事を見出した。この結果より、ヘテロクロマチン因子がrDNAリピートの維持に重要な役割を果たしていることが明らかにされた。
【2】非コードDNAと高次クロマチン化の構造基盤の解明(担当:有吉・須賀):溶液NMR法および生化学的手法を用いて、HP1αのヒストン結合制御におけるN末端領域の役割およびリン酸化の影響について構造学的な検証を行った。その結果、N末端領域がクロモドメインのヒストン結合部位周辺と静電的に相互作用することによって、メチル化H3K9me3との結合を阻害していること、また、リン酸化によってその阻害機構が解除されるというモデルが示唆された。またアイソフォーム特異的な分子内ヒストン結合制御における構造的な要因を明らかにした(有吉)。In vitro再構成ヌクレオソームの重合を利用したクロマチンタンパク質の結合アッセイ系を開発し、HP1のK9メチル化修飾に非依存的なヌクレオソームへの結合を検出した。また、HP1サブタイプで結合量に違いがあることを見出した。さらに、HP1を人為的に発現させた出芽酵母において、PHO5遺伝子の活性化が阻害されることを見出した(須賀)。
【3】ヘテロクロマチン構造制御の分子機構(担当:中山):HP1のクロマチン結合とリン酸化制御の関連を探るためHP1のN末端領域のリン酸化を制御するキナーゼの探索を行い、CK2がin vivoのキナーゼであることを突き止めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
分裂酵母をモデルとした研究では、非コードDNA領域をモニターする系の開発に成功し、またその系を応用してヘテロクロマチン因子の関与を明らかにすることが出来た点は高く評価出来ると考えている。非コードDNA領域がどのように染色体機能に影響を及ぼすかについても順調に系の構築が進んでいる。
HP1がどのように非コードDNA領域のクロマチン構造を変化させているのか、構造学的アプローチによる研究では、実際にリン酸化がHP1のN末端側の構造を変化させていることを実証できた。この研究成果については、現在論文投稿の準備を進めている。またヒストンのメチル化非依存的なHP1の機能についても、in vitroの生化学的実験、また出芽酵母をモデルとした実験で順調に成果が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
当初提案した研究課題に関しては、それぞれ着実に成果が得られており、計画通り研究を進めるとともに、論文をとりまとめる方向で研究を推進する予定である。また、提案した研究課題から派生する研究として、本領域の立ち上げに際して導入した次世代シーケンサーをフルに活用し、非コードDNAの機能に迫る研究へ展開していく必要があると考えている。実際に、印南班、小林班、太田班と共同で分裂酵母の比較ゲノム解析の準備を進めており、次年度以降研究を展開していくことで、非コードDNAの機能実体に迫りたいと考えている。
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