研究領域 | ゲノムを支える非コードDNA領域の機能 |
研究課題/領域番号 |
23114007
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 学習院大学 |
研究代表者 |
菱田 卓 学習院大学, 理学部, 教授 (60335388)
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キーワード | DNA損傷 / 非コードDNA領域 / DNA相同組換え / 突然変異 / DNA損傷トレランス / 紫外線 |
研究概要 |
非コードDNA領域は多くが反復配列からなるため、この領域にDNA損傷が生じた場合、DNA相同組換え自体がゲノム不安定性を増大させる要因となる可能性がある。そのため、非コード領域の損傷応答は厳密な制御下で機能することが必要であるが、その制御メカニズムに関しては不明である。本研究では、慢性的なDNA損傷ストレス環境下における、非コードDNA領域の安定性維持の分子機構とその生物学的意義を明らかにすることを目指している。初年度にあたる平成23年度は、(1)慢性的な紫外線ストレスによって誘発される突然変異誘発のメカニズムの解明及び、(2)非コードDNA領域の安定性に関与する損傷トレランス及び相同組換えの制御機構の解析を行った。 (1)慢性的な低紫外線環境下では、紫外線によるDNA損傷の修復機構であるヌクレオチド除去修復経路の欠損株は、損傷を蓄積しながら増殖が可能であるため、損傷によって誘発される変異を直接的に観察することが可能である。本実験系を利用して、CAN1遺伝子座の変異頻度及び、変異スペクトラム解析を行った結果、シトシン塩基を含むピリミジンダイマー内の脱アミノ化によって生じるウラシルが変異の誘発に関与していることを明らかにした。さらに、この変異の誘発はDNAポリメラーゼηによるウラシルに対するアデニンの対合の促進が関与していることがわかった。これらの結果は、現在論文投稿中である。 (2)Srs2 DNAヘリケースは相同組換えと損傷トレランスの制御に関与しているが、その詳細なメカニズムは不明な点が多い。今回、我々はsrs2変異株が出芽酵母の一倍体株に比べて、二倍体において特に高いDNA損傷感受性を示すことを見いだした。また、このような倍数性による偏った感受性は、組換え修復や損傷トレランス経路の欠損株では観察されないことから、srs2変異体特異的な現象であることがわかった。さらに、この感受性の違いは組換え機能の欠損(rad51変異株)によって消失することから、二倍体が持つ相同染色体間の組換え制御異常がsrs2変異株の感受性の違いの原因であることを見いだした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究代表者は、平成23年4月に大阪大学から学習院大学理学部へ研究室の移動を行った。そのため、研究設備のセットアップや新たなスタッフの獲得に多少の時間を必要としたため、研究の開始に遅れが生じることとなった。しかしながら、平成23年度後半になってからは、助教や研究補佐員の他、6名の新たな学生も研究室に配属され、研究体制が整いつつある。さらに、現在、複数の論文を投稿中であるなど、研究も進展している。
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今後の研究の推進方策 |
研究のために必要な研究設備のセットアップは平成23年度の間にほぼ完了し、各研究テーマを推進する人員も確保できており、研究体制はほぼ整ってきている。したがって、本年度は、1)慢性DNA損傷ストレスに対するゲノム安定性維持機構、2)慢性ストレスによる代謝機能調節、3)反復DNA配列のDNA相同組換えによる制御機構の3つの研究テーマ毎に人員を配置し、精力的に研究課題を推進していく。
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