1)非コードの安定性や染色体構造維持におけるDNA相同組換えの役割 一般に、相同組換え経路によるDNA二本鎖切断の修復の際には姉妹染色体が鋳型として用いられる。しかしながら、ヒトを含めた2倍体細胞では、低い頻度ながらも相同染色体が用いられる場合がある。相同染色体間の組換え異常は、がん細胞などで顕著に見られるヘテロ接合性の喪失や異数体が生じる原因となっている。本研究において、出芽酵母Srs2のDNAヘリカーゼ活性を失った変異体(srs2K41A)は、2倍体細胞において相同染色体間の組換え中間体の蓄積と染色体再編を顕著に引き起こし、細胞増殖の阻害を引き起こすことを見い出した。さらに、Srs2K41Aによる致死効果が組換え中間体の解消に関与するMus81-Mms4エンドヌクレアーゼの阻害によって引き起こされてことを明らかにした。本研究により、相同染色体間の組換え制御には姉妹染色体間の組換えとは異なった制御機構が存在することや相同染色体異常がゲノム不安定性を増大させることが示された。 2)DNA損傷ストレス耐性機能に関与するクロマチン制御機構 本研究では、DNA損傷トレランスの欠損株(rad18変異株)と421種類のヒストンH3、H4変異コレクションとの二重変異株を作製し、様々なDNA損傷ストレスに対する耐性機能を解析した。その結果、rad18変異株においてDNA損傷感受性の増大を引き起こす64のヒストン変異と、DNA損傷感受性を抑圧する9つのヒストン変異をそれぞれ同定した。さらに、これらの抑圧効果はDNA相同組換え経路の活性化に依存して起こっており、DNA損傷ストレス下での増殖を回復する一方で反復配列の不安定化などのゲノム不安定性を増大させていることを明らかにした。
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