研究領域 | ゲノムを支える非コードDNA領域の機能 |
研究課題/領域番号 |
23114008
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研究機関 | 公益財団法人かずさDNA研究所 |
研究代表者 |
舛本 寛 公益財団法人かずさDNA研究所, ヒトゲノム研究部, 室長 (70229384)
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研究期間 (年度) |
2011-07-25 – 2016-03-31
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キーワード | 非コードDNA / セントロメア / ヒト人工染色体 / クロマチン / 反復DNA |
研究概要 |
本研究では、多様なゲノムの機能が非コードDNAを介して如何に連係しながら維持・制御されているのか統合的に理解することを目標としている。本年度も引き続き、人工染色体を用いて染色体の機能を構成的につくり出し、セントロメアと染色体諸機能との連係を統御するクロマチンネットワーク機構の解明を目指して以下の研究を進めた。1.セントロメア機能構成因子の集合メカニズム:かずさcDNAライブラリーを利用して、多様なヒストンアセチル化酵素HATの中からtetR-Mis18複合体と相互作用し、セントロメア機能集合のマーカーであるCENP-Aの新規集合に関わるHAT複合体を同定した。このHAT複合体構成因子がMis18複合体と複数箇所で相互作用すること、更に、この下流でCENP-A集合への関わりが指摘されている複数因子がセントロメアへ集合し始めることを明らかにした。顕微鏡自動焦点調節装置の導入により、CENP-A集合に関わる因子の解析が進展した。2. 構成的手法によるクロマチンネットワーク解析:高田班と協力して、人工染色体を用いて、セントロメア機能集合に関る因子の一つがDNA損傷修復関連因子と相互作用することを発見し、セントロメアとDNA損傷修復を連係するクロマチンネットワーク解析を進めた。3.ネットワークのかく乱が引き起こす影響の解明:クロマチンネットワークをかく乱させた場合、染色体分配へ及ぼす影響や細胞分化に与える影響について解析するため、まず、マウスES細胞を用いて、各種ヒストン修飾酵素融合タンパクを染色体セントロメア(反復DNA)部位へ条件的に結合させるシステムの開発を進めた。更に、人工染色体を用いて染色体不安定性に関る因子を検定するシステムを構築した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画の1.セントロメア機能構成因子の集合メカニズム:(Tachiwana et al 2013,Dai X,et al 2013,)、3.ネットワークのかく乱が引き起こす影響の解明:(Lee H-S, et al 2013 )等、既に成果はいくつかの論文の形にまとまって来ている。2. 構成的手法によるクロマチンネットワーク解析:でも高田班との協力により、セントロメアとDNA損傷修復を連係するクロマチンネットワーク解析が進展中である。更に、HATがヘテロクロマチンの集合と拮抗してセントロメア集合を正に制御している現象の発見により(Ohzeki et al 2012)、本年度は研究が大幅に進展してHAT複合体がMis18複合体と相互作用する詳細が明らかになった。また、この反応の下流でセントロメア集合を制御する因子のネットワーク解明も進み始めた。以上により、本研究は当初からの計画通り順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
本新学術領域研究の目標は、多様なゲノムの機能が非コードDNAを介して如何に連係しながら維持・制御されているのか統合的に理解することである。染色体分配機能に関わるセントロメアは、反復DNA領域に形成され、非コードDNAと染色体機能との連係機構に迫る絶好の標的である。しかし、必ずしもセントロメア構成因子が反復DNAに対して1:1の配列特異性のみで集合する訳ではない。このセントロメアの反復DNAにはヘテロクロマチンも集合し、セントロメア機能制御との関わりが指摘されており、さらにこの領域は染色体の維持制御ネットワークの主要センターとしても注目される。本研究では、人工染色体を用い染色体の様々な機能を構成的につくり出し、セントロメアとヘテロクロマチン、染色体諸機能との連係を統御するクロマチンネットワーク機構の解明を進め、高次生命現象の制御メカニズムの実体に迫る計画である。特に、かずさcDNAライブラリーと人工染色体システムを利用してヘテロクロマチン集合とセントロメア集合とのバランス形成に関わる因子を解析する研究は様々な成果を見せているので今後のクロマチンネットワーク機構の解明に活かして行く。また、マウスES細胞や多様な分化段階にある細胞も用いて研究を進める。
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