計画研究
1)染色体ストレス高感受性部位の網羅的解析:染色体ストレス下におけるDNA損傷応答タンパク質のクロマチン集積を指標に、ストレス高感受性部位を同定し、その性状を解析する。新規のゲノム編集酵素であるTALENを用いてヒト細胞のFANCD2遺伝子C末領域に3xFLAGタグをノックインすることに成功した。今年度は、ChIP条件の検討をほぼ完了したので、来年度は太田班との連携でChIP-seq法を実施し、非コードDNA領域との関連に着目しつつ、ストレス高感受性部位をゲノムワイドに同定することを試みる。2)複合体プロテオミクスによる複製フォーク安定化と崩壊機構の解析: ATRIP、FANCL、FANCD2、FANCIの複合体精製により同定された因子のうち、FANCD2に会合するCtIPを中心に解析した。CtIPはFAND2依存的に損傷局所に集積し、DNA二重鎖切断の末端においてend resectionに機能することがわかった。これらの結果は、CtIPがFANCD2の機能的エフェクターとして複製フォーク安定化に寄与することを意味している。3)染色体ストレス下のチェックポイントキナーゼATRIP-ATR初期活性化機構の解析:ATRIP因子のクロマチン集積にファンコニ貧血コア複合体成分が重要な役割を果たすことを見出した。ATRIPとFANCLは会合することが判明し、ATRIPとRPAの結合を安定化する。これらの成果をまとめ論文発表した(Nucleic Acids Res. 41(14):6930-6941 (2013))。4)領域内の他班との連携:ChIP-seqは太田班との連携研究である。小林班の同定した酵母においてrDNA安定性に重要な因子の高等生物における機能にを明らかにするためRPL27A分子のノックアウト細胞構築を行った。また、桝本班とは、CENP-AシャペロンHjurpのDNA損傷と複製ストレスにおける役割について検討中である。特に、Hjurpの損傷局所への集積と、各種因子との直接会合を検討した。
3: やや遅れている
おおむね順調に成果を得ており、論文も出版することができている。中間評価でもその旨のコメントをいただいた。しかし、一部の実験でやや遅れが出ている。特に、ChIP-seq法の実施において、いろいろ検討事項が多く、期待したスピードで進行することが出来ていないのは事実である。それも検討はほぼ完了したので、来年度はいよいよ次世代シーケンサーにかける段階となっている。
今後の研究推進に、研究室に配置されるあらたな人員を投入し、siRNAによるスクリーニングを行いたい。これは従来行っていないストラテジーであり、当施設に設置されたIn Cell Analyzerと組み合わせることで、多数の因子の複製フォーク維持における機能を迅速に検討可能となることが期待できる。また、新規にDT40細胞におけるジーンターゲティングを行い、遺伝子ノックアウト細胞を樹立し、新知見を得ることを目指す。
すべて 2013 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 2件)
Nucleic Acids Res.
巻: 41 ページ: 6930-6941
10.1093/nar/gkt467
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