研究領域 | 少数性生物学―個と多数の狭間が織りなす生命現象の探求― |
研究課題/領域番号 |
23115002
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
野地 博行 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (00343111)
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研究分担者 |
渡邉 朋信 独立行政法人理化学研究所, 生命システム研究センター, チームリーダー (00375205)
市村 垂生 独立行政法人理化学研究所, 生命システム研究センター, 研究員 (50600748)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | デジタル計測 / 1分子計測 / 超解像顕微鏡 / ウイルス計測 |
研究実績の概要 |
本計画研究は、1分子デジタルELISA法を応用した、デジタルバイオアッセイの開発と超解像顕微鏡と2改変型蛍光タンパク質に基づいた1細胞タンパク質計数法、の2つの技術課題を中心に取り組む。 デジタルバイオアッセイの開発:新しいデジタルバイオアッセイとして、インフルエンザウイルス1粒子の検出法の開発に取り組んだ。インフルエンザウイルス表面にあるノイラミニダーゼの活性を指標にして、ドロップレット内のウイルス検出を行ったところ、1粒子ウイルスでも検出可能であることが分かった。また、本法の検出感度は、一般的に用いられている免疫抗体法に比べ10倍から100倍高いことが分かった。また、既存のデジタルアッセイの改良にも取り組んだ。検出用酵素として用いているアルカリフォスファターゼの基質について検討を行った。従来使用している4MUPはアルカリ性条件でしか強い蛍光を発しないため、他の酵素と同時にアッセイすることが困難であった。そこで今回、DiFMUPと言う中性域でも強い蛍光を発する基質を検討したところ、pH7でも十分観察可能な蛍光を得ることが出来た。これにより、βgalactosidaseのような他の酵素と同時にアッセイが可能になるため、マルチカラーデジタルELISAへ発展が可能となる。 高速超解像蛍光顕微鏡の開発:波長分離型の超解像一分子イメージング法の分解能の評価および最適化に取り組み、30msの時間分解能で4nm程度の空間分解能を達成するに至った。筋肉ミオシンの協同的動態の観察に着手し、実験条件の最適化に取り組んだ。また、光スイッチング蛍光蛋白質を用いた走査型超解像イメージング法の開発にも取り組み、原理検証実験において、回折限界を超える空間分解能を達成できることを実験的に示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は、アッセイのハイスループット化を予定していた。そのため、96穴プレートベースのアッセイ方法の開発を行い、自動分注機を用いてデジタルELISAを行わせることにも成功した。これにより、操作のほとんどを自動化することに成功したが、歩留まりがまだ悪く検討が必要な点もある。さらに、自動解析プログラムの開発にも取り組んだ。このように当所定を順調にこなしていることに加え、ウイルス1粒子検出包の開発など、想定をしていない広がりが出てきている。
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今後の研究の推進方策 |
27年度は、最終年度でもあるため、これまでの成果を発表することに注力する。また、試験的に開始した新しいデジタルアッセイに関しても、推進する。自動化に関しては、問題点の解消を行い、歩留まりの向上に努める。デジタルELISAに関しては、マルチカラーでアッセイを可能にすることで、検出限界の低減を図りさらなる高感度化を目指す。 波長分離型の超解像一分子イメージング法の開発では、筋肉のミオシンの協働的動態の観察に集中的に取り組む。公募研究チームとの共同研究として取り組み、今後の応用研究の可能性を探る。光スイッチングタンパク質を用いた超解像法の開発においては、細胞内イメージングへと展開する。また、光スイッチングタンパク質を用いて、細胞内の拡散情報の取得が可能であることを最近提案しており、原理検証実験に取り組む。最終的に、光スイッチング蛍光タンパク質を利用した、新規細胞内分子動態のナノイメージング法として取りまとめる。
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