計画研究
本研究計画班では、生物における少数分子ネットワークにおける数および生理機能を定量的に可視化し操作することを可能とする技術の開発を目的としている。本年度は、【1】細胞内の生理機能を可視化可能な蛍光・発光センサー、【2】超解像イメージングに用いることができる熱緩和スイッチング蛍光プローブ、【3】光操作を可能とするタンパク質および合成化合物、【4】細胞性粘菌の多細胞体形成における細胞数依存性、を中心とした研究を行った。【1】に関しては、昨年度開発に成功した光活性化型カルシウムセンサーのコントラストを更に改良するとともに、超解像イメージングに応用可能な光スイッチング型カルシウムセンサーの作製も行った。また、高光度発光タンパク質のシアン、オレンジ変異体の開発に成功し、論文発表を行った(PNAS 2015)。【2】に関しては、新規光スイッチング型蛍光タンパク質Kohinoorによる極めて生体に優しい超解像法を確立し論文投稿した。さらに素早い熱緩和により蛍光性が確率的にオンになる新規蛍光タンパク質を開発し、2000フレームの1分子画像を2秒で取得し35nmの空間分解能を有するDSSM画像を得ることに成功した。【3】に関しては、ホスホジエステラーゼと光応答性タンパク質を融合したキメラタンパク質や光応答性アデニル酸シクラーゼを用い、光によるcAMP濃度制御に成功した。また、アジド部を有する非天然アミノ酸の導入による光応答性タンパク質のモジュール化にも成功した。【4】に関しては、単一細胞レベルで走化成に必須な機能分子の絶対数計測することで、細胞集団レベルでの発現数分布を定量化するとともにその時間変化を解析した。その結果、発現分子数が極めて少ないcAMP合成酵素の発現とその時間変化が複数のガンマ分布の重ね合わせで記述できる事が明らかになった。
1: 当初の計画以上に進展している
細胞内の微小コンパートメント内における機能イメージングを実現するために、既に開発した光活性化型カルシウムセンサータンパク質の光活性化前後でのコントラストを、これまでの5倍から最大70倍まで拡大化することに成功した。また、高頻度ブリンキング蛍光タンパク質を開発する過程で熱緩和により確率的に蛍光性がオンになる新規蛍光タンパク質が得られ、それを用いることにより超解像画像を35 nm、2秒の時空間分解能で撮影することに成功した。さらに、世界初となる光スイッチング型Ca2+指示薬のプロトタイプ開発にも成功した。生理機能の光操作を行いつつ、各機能タンパク質の細胞単位での存在数を一分子粒度で計測する技術の構築が加速度的に進みつつあることは当初の計画以上の進展であるといっても過言ではない。
新規に開発した光スイッチング型蛍光タンパク質を用いた超解像観察により、細胞内に存在する特定分子の全数計測および局在同定法を確立する。また、この光スイッチング型蛍光タンパク質を応用した光スイッチング化型生理機能センサーの開発を推し進め、世界初の機能超解像イメージング法を実現する。光制御技術についてはcAMP以外の環状リン酸誘導体濃度の可逆制御を目指して、PDE5等への光応答性モジュールの導入を検討する。また、細胞性粘菌の運動制御も試みる。高光度発光タンパク質に基づく機能センサーとこれら光制御技術を組み合わせることによって、特に細胞が示す走化性応答の分子少数性問題に切り込む。さらに、各機能分子について発現数の相関関係を明らかにするため一細胞精度で二つ以上の遺伝子ペアについて分子数の同時計測を行う。200細胞以上の集団について定量計測する事で、走化性応答に関わるシグナル伝達回路の機能差の細胞個性を解明する。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (22件) (うち査読あり 20件、 オープンアクセス 10件、 謝辞記載あり 12件) 学会発表 (72件) (うち招待講演 23件) 図書 (1件) 産業財産権 (1件) (うち外国 1件)
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