研究領域 | 少数性生物学―個と多数の狭間が織りなす生命現象の探求― |
研究課題/領域番号 |
23115004
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
石島 秋彦 東北大学, 多元物質科学研究所, 教授 (80301216)
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研究分担者 |
杤尾 豪人 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70336593)
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キーワード | バクテリア / 情報伝達 / リン酸化 / ダイヤモンドナノ粒子 / ラマン分光 |
研究概要 |
細胞内における生体分子の化学反応は,非常に少数からなる密度の濃い状態での反応であり,その反応メカニズムを明らかにするためには,少数分子からなる有限時間,空間における反応を直接観察,計測し,その理論的考察まで含めた学問体系を確立する必要がある.本申請では,高速ビデオカメラによるべん毛回転の観察法、ダイアモンドナノ粒子を用いた磁気共鳴共役蛍光観察法、細胞内ラマン分光など新規な測定方法を開発・適用することにより、細胞内外における少数分子の挙動について可能な限り定量的な解析を行う. べん毛については,これまでに構築した,ナノ計測システムとイメージングシステムを融合することにより,各モーター間の連携の様子,走化性シグナルからの情報伝達による回転の応答,外部刺激の変化による回転の応答,ケージド化合物を用いた局所的環境変化と細胞の応答との相関,遺伝情報の制御,発現の様子と回転との相関をこのマルチモーターの計測手法を用いて計測を試みる. 計測の結果,モーター間の回転方向の転換のタイミングには相関があり,さらに,そのタイミングには時間遅れが見られた.この時間遅れはモーター間の距離に依存し,極からの情報の流れが波状に細胞内を伝わって伝搬されたことを示唆する. このことは今までに報告されてはおらず,新たな発見となる.また,ケージド化合物を用いた外部刺激により,細胞の回転方向の割合が変化した.このことは,ケージド化合物による刺激により,受容体からの情報が細胞内部に発せられたことを示すものである. ダイヤモンドナノ粒子の表面を化学修飾するため、様々な官能基を導入する方法を確立した.これによりダイヤ粒子に蛋白質や低分子化合物を繋ぐことができる.ラマンについては重水素化アミノ酸や低分子化合物を用いて予備実験を行った.重水素化によりラマンシフトが変化し、特にCD伸縮振動は細胞内分子と十分に区別できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
外部刺激なしでのモーター解析は順調に進行している.しかし,CW→CCW,CCW→CW,それぞれ独自の解析はまだ不十分である.また,ケージド化合物による刺激の実験も順調に進行しているが,その実験方法,解析方法はさらに考察を重ねる必要がある. ダイヤモンドナノ粒子の表面修飾法を確立した.ラマンについては重水素化により細胞成分のラマンシグナルが現れない位置にシグナルが発生することがわかった。
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今後の研究の推進方策 |
モーターの応答のみの解析で現在研究を進行しているが,さらなる情報を得るためには,イメージング技術との同時計測が必要となる.そのための光学設計を新たに行う必要がある. ダイヤモンドナノ粒子にアンピシリンを結合させる。次に、細胞膜受容体に阪大・菊地和也博士らが開発したBL-tagを付加したコンストラクトを作成する。これにより当該受容体をダイヤで標識できる。ラマンについては、金ナノ粒子を用いた表面増強効果を蛋白質試料について試みる。
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