細胞内情報伝達の少数性生物学

2013 年度 実績報告書

• 研究領域: 少数性生物学―個と多数の狭間が織りなす生命現象の探求―
• 研究課題/領域番号: 23115004
• 研究機関: 東北大学
• 研究代表者: 石島 秋彦 東北大学, 多元物質科学研究所, 教授 (80301216)
• 研究分担者: 杤尾 豪人 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70336593)
• 研究期間 (年度): 2011-07-25 – 2016-03-31
• キーワード: バクテリア / 走化性

研究概要

細胞内における生体分子の化学反応は，非常に少数からなる密度の濃い状態での反応である．従って，生体内での生体分子の反応メカニズムを明らかにするためには，少数分子からなる有限時間，空間における反応を直接観察，計測し，その理論的考察まで含めた学問形態を確立する必要がある．本申請においては，高速ビデオカメラによるべん毛回転の観察法、ダイアモンドナノ粒子を用いた磁気共鳴共役蛍光観察法、細胞内ラマン分光など新規な測定方法を開発・適用することにより、細胞内外における少数分子の挙動について可能な限り定量的な情報を取得し、入力と出力との間の関係を定量的に表現し、分子間の協同性等を詳細に解析することを目論む．本研究では，これまでに構築した，ナノ計測システムとイメージングシステムを融合することにより，各モーター間の連携の様子，走化性シグナルからの情報伝達による回転の応答，外部刺激の変化による回転の応答，ケージド化合物を用いた局所的環境変化と細胞の応答との相関，遺伝情報の制御，発現の様子と回転との相関をこのマルチモーターの計測手法を用いて計測を試みる．
ケージド化合物を用いた外部刺激により，細胞の回転方向の割合（CW/(CW+CCW））が変化した．このことは，ケージド化合物による刺激により，受容体からの情報が細胞内部に発せられたことを示すものである（論文投稿中）．
また，CheYとGFPの融合タンパク質を発現し，モーターの回転とモーター基部体への結合の様子を同時に計測することを試みた．その結果，CW中に回転中心の蛍光強度が上昇することを見いだした．さらに，結合・解離の時定数，結合したCheYの分子数などを見積もることに成功した（Science Signalingに発表）．

現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

走化性応答に関しては，まとめたものを投稿した．しかし，3人のレビューアーからいくつかの指摘を受け，現在それらの指摘に対して変更を行っている．

今後の研究の推進方策

今までの研究から，細胞内情報伝達に関する知見をほぼ得ることができた．しかし，まだ手つかずのものが走化性レセプターの活性変化である．
現在，FRETを用いたレセプター活性の可視化を試みている．

研究成果

• [雑誌論文] Direct Imaging of Intracellular Signaling Components That Regulate Bacterial Chemotaxis. (2014)
  • 著者名/発表者名: 1.Hajime Fukuoka, Takashi Sagawa, Yuichi Inoue, Hiroto Takahashi, and Akihiko Ishijima.
  • 雑誌名: Science Signaling 巻: 319 ページ: ra32
  • DOI: 10.1126/scisignal.2004963
  • 査読あり
• [雑誌論文] Hybrid-fuel bacterial flagellar motors in Escherichia coli (2014)
  • 著者名/発表者名: 2.Yoshiyuki Sowa, Michio Homma, Akihiko Ishijima, and Richard M. Berry
  • 雑誌名: Proc Natl Acad Sci U S A. 巻: 111 ページ: 3436-41
  • DOI: 10.1073/pnas.1317741111
  • 査読あり
• [雑誌論文] Functional assessment of the mutational effects of human IRAK4 and MyD88 genes. (2014)
  • 著者名/発表者名: Yamamoto T, Tsutsumi N, Tochio H, Ohnishi H, Kubota K, Kato Z, Shirakawa M, Kondo N.
  • 雑誌名: Mol Immunol 巻: 58(1) ページ: 66-76
  • DOI: 10.1016/j.molimm.2013.11.008.
  • 査読あり
• [雑誌論文] Temperature Dependences of Torque Generation and Membrane Voltage in the Bacterial Flagellar Motor. (2013)
  • 著者名/発表者名: Yuichi Inoue, Matthew A.B. Baker, Hajime Fukuoka, Hiroto Takahashi, Richard M. Berry, Akihiko Ishijima.
  • 雑誌名: Biophysical Journal 巻: 105 ページ: 2801-2810
  • DOI: 10.1016/j.bpj.2013.09.061
  • 査読あり
• [雑誌論文] High Hydrostatic Pressure Induces Counterclockwise to Clockwise Reversals of the Escherichia coli Flagellar Motor (2013)
  • 著者名/発表者名: 4.Masayoshi Nishiyama, Yoshiyuki Sowa, Yoshifumi Kimura, Michio Homma, Akihiko Ishijima and Masahide Terazima
  • 雑誌名: Journal of Bacteriology 巻: 8 ページ: 1809-1814
  • DOI: 10.1128/JB.02139-12
  • 査読あり
• [雑誌論文] Pruning the ALS-associated protein SOD1 for in-cell NMR. (2013)
  • 著者名/発表者名: Danielsson J, Inomata K, Murayama S, Tochio H, Lang L, Shirakawa M, Oliveberg M.
  • 雑誌名: J Am Chem Soc 巻: 135(28) ページ: 10266-9
  • DOI: 10.1021/ja404425r.
  • 査読あり
• [雑誌論文] Quantitative comparison of protein dynamics in live cells and in vitro by in-cell (19)F-NMR. (2013)
  • 著者名/発表者名: Takaoka Y, Kioi Y, Morito A, Otani J, Arita K, Ashihara E, Ariyoshi M, Tochio H, Shirakawa M, Hamachi I..
  • 雑誌名: Chem Commun (Camb) 巻: 49(27) ページ: 2801-3
  • DOI: 10.1039/c3cc39205h.
  • 査読あり
• [学会発表] Temperature changes in norepinephrine-stimulated brown adipocytes detected with a bimaterial microcantilever (2013)
  • 著者名/発表者名: Masaaki Sato, Masaya Toda, Naoki Inomata, Hisataka Maruyama, Yuko Okamatsu-Ogura, Fumihito Arai, Takahito Ono, Akihiko Ishijima, Yuichi Inoue
  • 学会等名: The 2013 American Society for Cell Biology annual meeting
  • 発表場所: 米国,ニューオーリンズ
  • 年月日: 20131214-20131218
• [学会発表] 蛍光イメージングによる大腸菌細胞内情報伝達の直接的観察 (2013)
  • 著者名/発表者名: 福岡 創, 佐川貴志, 井上裕一, 高橋泰人, 石島秋彦
  • 学会等名: 第13回多元物質科学研究所研究発表会
  • 発表場所: 日本,仙台
  • 年月日: 20131206-20131206
• [学会発表] Analysis of angular steps of bacterial flagellar motors using an elliptic probe (2013)
  • 著者名/発表者名: 井上 裕一, 分部 寛道 , 佐川 貴志, 福岡 創 , 石島 秋彦
  • 学会等名: 第51回日本生物物理学会年会
  • 発表場所: 日本,京都
  • 年月日: 20131028-20131030
• [学会発表] ケージドセリン光分解とべん毛モーター回転計測を用いた大腸菌走化性応答の高時間分解能計測 (2013)
  • 著者名/発表者名: 佐川 貴志, 福岡 創, 井上 裕一, 高橋 泰人, 石島 秋彦
  • 学会等名: 第51回日本生物物理学会年会
  • 発表場所: 日本,京都
  • 年月日: 20131028-20131030
• [学会発表] バクテリアべん毛モーターの高時間分解能回転ステップ計測系の開発 (2013)
  • 著者名/発表者名: 分部 寛道, 井上 裕一 , 石島 秋彦
  • 学会等名: 第51回日本生物物理学会年会
  • 発表場所: 日本,京都
  • 年月日: 20131028-20131030
• [学会発表] 蛍光イメージング法による機能的べん毛モーターと走化性シグナル伝達分子CheYの結合の直接的観察 (2013)
  • 著者名/発表者名: 福岡 創, 佐川 貴志, 井上 裕一, 高橋 泰人, 石島 秋彦
  • 学会等名: 第51回日本生物物理学会年会
  • 発表場所: 日本,京都
  • 年月日: 20131028-20131030
• [学会発表] ケージドセリン光分解とべん毛モーター回転計測を用いた大腸菌走化性応答の高時間分解 能計測 (Response of flagellar motor rotation to photoreleased serine from caged-compound in an E. coli cell) (2013)
  • 著者名/発表者名: 佐川 貴志 1, 福岡 創 1,2, 井上 裕一 1,2, 高橋 泰人 2, 石島 秋彦 1,2 (1 東北大学大学院生命科学研究科, 2 東北大学多元物質科学研究所) (Takashi Sagawa 1, Hajime Fukuoka 1,2, Yuichi Inoue 1,2, Hiroto Takahashi 2, Akihiko Ishijima 1,2 (1 Grad. Sch. Life Sci., Tohoku Univ., 2 IMRAM, Tohoku Univ.))
  • 学会等名: 第51回日本生物物理学会年会 (The 51st Annual Meeting of the BSJ)
  • 発表場所: 日本,京都府
  • 年月日: 20130825-20130927
  • 招待講演
• [学会発表] 細菌べん毛モーターとシグナル伝達分子CheYの結合を細胞内でイメージングする (2013)
  • 著者名/発表者名: 福岡 創, 佐川貴志, 井上裕一, 高橋泰人, 石島秋彦
  • 学会等名: 大腸菌研究会
  • 発表場所: 日本,修善寺
  • 年月日: 20130620-20130621
• [学会発表] 単一バクテリア上の複数モーター回転の同時計 測による情報伝達機構の解明 (2013)
  • 著者名/発表者名: 石島秋彦
  • 学会等名: 第65回細胞生物学会大会
  • 発表場所: 日本,愛知
  • 年月日: 20130619-21030621
  • 招待講演
• [学会発表] Measurement for cell temperature of norepinephrine-stimulated brown adipocytes using bimetal cantileve (2013)
  • 著者名/発表者名: Masaaki Sato, Masaya Toda, Naoki Inomata, Yuichi Inoue, Takahito Ono, Akihiko Ishijima
  • 学会等名: 第65回 日本細胞生物学会大会
  • 発表場所: 日本,愛知
  • 年月日: 20130619-20130621
  • 招待講演
• [学会発表] 単一バクテリア上の複数モーター回転の同時計 測による情報伝達機構の解明 (2013)
  • 著者名/発表者名: 石島 秋彦
  • 学会等名: 日本顕微鏡学会第69回学術講演会
  • 発表場所: 日本,大阪
  • 年月日: 20130520-20130522
  • 招待講演